孫太夫山古墳

孫太夫山古墳：大仙陵古墳の傍らに眠る陪塚

孫太夫山古墳は、大阪府堺市堺区夕雲町の大仙公園内に位置する前方後円墳です。百舌鳥古墳群を構成する古墳の一つであり、巨大な大仙陵古墳（仁徳天皇陵古墳）の陪塚として知られています。2019年には、世界文化遺産「百舌鳥・古市古墳群 -古代日本の墳墓群-」の構成資産の一部として登録され、その歴史的価値が世界的に認められました。

古墳の概要

孫太夫山古墳は、大仙陵古墳の南側の外濠近く、竜佐山古墳の東側に位置しています。前方部を西に向け、墳丘の主軸線は大仙陵古墳の外濠と並行するように築造されています。墳丘の形状は、前方部が短い帆立貝形前方後円墳（帆立貝形古墳）であり、その位置と主軸線の方向から、大仙陵古墳の陪塚と考えられています。

墳丘は全長約65メートル、後円部の直径は約46メートル、高さは約7.7メートルです。前方部の幅は約26メートル、高さは約2メートルと推定されています。現在、前方部の輪郭や周濠は埋没保存されていますが、公園造成時に行われた範囲確認調査を基に推定復元されています。ただし、復元には根拠が乏しい部分もあり、周濠外側の斜面は鉄筋コンクリートと玉石で固められています。

歴史

1926年（大正15年）の宮内庁の測量時には、すでに前方部が削平されていたことが記録されています。享保年間に描かれた『舳松領絵図』では、周濠は埋まり、水田として描かれており、畦の輪郭が周濠の名残として読み取れます。

現在、後円部は宮内庁が「仁徳天皇陵陪塚 い号飛地」として管理し、前方部と周濠は堺市が管理しています。前方部および周濠は、堺市の史跡に指定されています。

発掘調査

古墳の全容を把握するため、過去に何度か発掘調査が行われています。

1978年： 大仙公園整備に伴う古墳整備工事の事前調査が行われましたが、記録は残されていません。
1996年： 古墳北側歩道の下水道推進立坑掘削工事に伴う立ち会い調査で、周濠が推定復元範囲よりも広い範囲に存在していた可能性が指摘されました。
2007年： 百舌鳥古墳群史跡指定申請に伴う範囲確認を目的とした事前調査が行われ、周濠外側の遺構などの埋蔵文化財の存在確認が行われました。
2008年： 地中レーダ探査により、周濠の西側・南側の縁が現状よりも内側にあったと推定されました。
2011年～2012年： 墳丘・周濠の形状を確認し、古墳の範囲を調査する目的で発掘調査が行われ、埴輪や須恵器などが出土しました。

これらの調査から、古墳の築造時期は5世紀中頃と推定され、大仙陵古墳との関連性が示唆されています。

出土品

埋葬施設や副葬品は不明ですが、かつて墳頂から土製勾玉が数個採取されたと伝えられています。発掘調査では、葺石や小型の円筒埴輪、朝顔形埴輪などが出土しており、これらの埴輪は大仙陵古墳の埴輪と特徴が似ていることから、同時期に作られたと考えられています。

古墳の名称の由来

古墳前方部西側の石碑には、「江戸時代、大鳥郡中筋村庄屋南孫太夫の所有であった」と記されています。南家に所蔵される古文書によると、明治初期に古墳後円部の大半が南家より国に寄贈され、1968年（昭和43年）までに後円部の残りが宮内庁に、前方部と周濠が堺市に寄贈されたとされています。このことから、古墳の名称は南孫太夫に由来すると考えられます。

文化財としての価値

孫太夫山古墳は、その歴史的・文化的価値から、以下の文化財に指定・登録されています。

堺市指定史跡（孫太夫山古墳前方部および周濠）：2017年（平成29年）2月6日指定
世界文化遺産「百舌鳥・古市古墳群 -古代日本の墳墓群-」構成資産：2019年（令和元年）7月6日登録

アクセス

JR阪和線百舌鳥駅 徒歩約10分

孫太夫山古墳は、大仙陵古墳を訪れる際にはぜひ立ち寄りたい史跡です。その形状や歴史に思いを馳せながら、古代日本の息吹を感じてみてください。

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