孫奮

孫奮（そん ふん）

孫奮（生没年不詳）は、中国三国時代の呉の皇族。父は呉の初代皇帝・孫権、母は仲姫。弟に孫亮がいる。字は子揚。『三国志』呉志「呉主五子伝」にその名が記録されている。

生涯

建興元年（252年）、孫奮は斉王に封じられ、武昌に居を構えた。当初は呂岱が補佐についたものの、その素行は必ずしも褒められるものではなかった。

父・孫権の崩御後、弟の孫亮が皇帝として即位。幼い弟帝の後見役として国政の実権を掌握した諸葛恪は、諸王が要地に割拠することを警戒し、孫奮を武昌から豫章へ移そうと画策した。この異動命令に対し、孫奮は反発。しかし、諸葛恪は彼に対し、過去の悪行をほのめかし、厳しい口調で諌める書簡を送った。身の危険を感じた孫奮は、やむなく南昌へと移った。

その後、諸葛恪が誅殺されると、孫奮は蕪湖へと移り住んだ。政変の混乱に乗じて都の建業へ進出し、勢力拡大を狙ったが、傅相の謝慈らに諫止されたため、彼らを殺害。これにより、庶民へと身分を落とされた。

永安元年（258年）、弟の孫亮から恩赦を受け、章安侯に封じられた。

建衡2年（270年）、呉の皇帝・孫晧は、寵愛していた左夫人の王氏を亡くし、深く悲しんだ。その悲しみのあまり、しばらく公の場に姿を現さなかったため、孫晧の死亡説が流れた。この噂が広まるにつれ、孫奮または孫奉のどちらかが数ヶ月以内に皇帝の位に就くのではないかという憶測が飛び交った。豫章太守の張俊のように、この噂を真に受ける者まで現れた。

この噂を知った孫晧は激怒し、孫奮とその五人の息子、さらに孫奉を処刑した（『江表伝』によると、孫奮は章安から呉へ連行された上で毒を賜り、自害したとされる）。また、豫章において孫奮の母である仲姫の墓を清掃した張俊は、車裂きの刑に処された。

歴史家の陳寿は、孫奮の没落は自業自得であるとしながらも、最終的に一族皆殺しとなったことについては、とばっちりによる災難であると同情の念を示している。

孫奮の生涯は、呉の皇族としての栄光と、権力闘争に巻き込まれた悲劇的な末路を象徴していると言えるだろう。

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