諸葛恪

諸葛恪（しょかつ かく）

諸葛恪（しょかつ かく）は、中国の三国時代の呉に仕えた政治家です。字は元遜（げんそん）。徐州琅邪郡陽都県（じょしゅう ろうやぐん ようとけん）の出身で、蜀（蜀漢）の丞相である諸葛亮（しょかつりょう）の甥にあたります。父は呉の重臣である諸葛瑾（しょかつきん）です。

生涯

孫権時代

幼い頃から非常に賢く、機知に富んでいました。しかし、性格は父や叔父とは異なり、思慮深さに欠け、傲慢で野心家でした。弁舌が立ち、他人をやり込めることを好み、才能をひけらかす傾向があったため、家族からは将来を心配されていました。

幼少の頃の逸話として、孫権（そんけん）が宴会の席で驢馬（ろば）の額に「諸葛子瑜（しょかつしゆ）」と書いた際、父を侮辱されたと感じた諸葛恪は、その下に「之驢（これロバなり）」と書き加え、孫権を感嘆させたという話があります。また、孫権に「父と叔父、どちらが偉いか？」と問われ、「父です。仕えるべき主君を心得ているからです」と答え、孫権を感心させました。

しかし、負けず嫌いな一面もあり、皇太子の孫登（そんとう）にからかわれた際に、言い返すなど、皇太子に対しても物怖じしない態度をとることもありました。

父の諸葛瑾は、息子の才能を認めつつも、その性格を憂慮し、「家を栄えさせるのも、滅ぼすのもこの子だろう」と嘆いたといいます。叔父の諸葛亮も、陸遜（りくそん）に宛てた手紙の中で、諸葛恪の性格について注意を促しています。

皇太子の孫登の側近として仕え、「孫登の四友」の一人として重用されました。丹陽郡（たんようぐん）の太守に任じられると、山越（さんえつ）の討伐に成功し、多くの兵を帰順させました。

孫権の後継者争いである二宮事件（にきゅうじけん）では、孫和（そんわ）を支持しましたが、長男の諸葛綽（しょかつたく）が孫覇（そんは）を支持したため、孫権から再教育を命じられました。その後、諸葛綽を毒殺したとされています。

孫亮時代

孫権が亡くなり、孫亮（そんりょう）が即位すると、諸葛恪は太傅（たいふ）に任じられ、政治の実権を握りました。税制改革や恩赦を行い、民衆からの支持を集めました。

東興（とうこう）に堤を築き、魏軍の侵攻を防ぐことに成功しました（東興の戦い）。この功績により、陽都侯（ようとこう）に封じられ、揚州（ようしゅう）と荊州（けいしゅう）の牧（ぼく）を兼任し、国内の軍事全般を指揮する立場となりました。

しかし、その勝利に奢り、周囲の反対を押し切って北伐（ほくばつ）を強行しました。合肥新城（がっぴしんじょう）を包囲しましたが、陥落させることができず、呉軍内部で疫病が蔓延したため、撤退を余儀なくされました（合肥新城の戦い）。

北伐の失敗後、人々の不満が高まっていることを察知した孫峻（そんしゅん）は、孫亮と共謀して諸葛恪を暗殺しました。弟の諸葛融（しょかつゆう）は自殺し、一族も処刑されました。

人物

身長が高く、容貌は堂々としていました。弁舌に長け、機知に富んでいましたが、傲慢で他人を見下す傾向があり、周囲からは敬遠されることもありました。

評価

陳寿（ちんじゅ）は、『三国志』の中で、諸葛恪を「才気にあふれ、大きな展望をもって働く事ができたが、驕慢で狭量であった」と評しています。

逸話

蜀の使者である費禕（ひい）との会食で、互いに詩を詠み合い、その才能を披露した。
孫権に酒を勧められた際、高齢の張昭（ちょうしょう）が飲もうとしなかったため、巧みな弁舌で張昭を言い負かし、酒を飲ませた。
* 孫権から「そなたは丞相（諸葛亮）と比べてどうか」と問われ、「丞相は私に及びません」と答えた。

補足

正史以外にも、知恵者としての伝承が後世に伝えられています。

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