宇佐美敏晴

宇佐美敏晴（うさみ としはる）氏は、1947年8月5日に愛媛県で生を受け、2018年6月19日にその生涯を閉じたプロ野球選手です。主に投手として活躍しましたが、プロでのキャリアは残念ながら短命に終わりました。しかし、引退後は郷里で新たな道を切り拓き、地域社会にも貢献しました。

地元の愛媛県立西条高校に進学した宇佐美氏は、野球部でその才能を開花させました。投手としてだけではなく、三塁手や右翼手もこなす器用さを見せ、チームの主軸として活躍。1965年の夏の甲子園予選、北四国大会の県予選では準々決勝まで勝ち進むものの、北宇和高校に敗れ甲子園出場は叶いませんでした。しかし、この予選では右翼手、そして三番打者としても出場し、打率.250を記録するなど、打者としてのセンスも持ち合わせていました。

高校卒業後、1965年のプロ野球ドラフト会議で、宇佐美氏は読売ジャイアンツから6位指名を受け、プロの世界へと飛び込みます。背番号は47に決まりました。入団後、ルーキーイヤーの1966年は二軍で過ごしましたが、翌1967年には飛躍の機会が訪れます。同年にはジュニアオールスターゲームにも出場するなど、将来を期待される若手選手の一人となりました。

特に1967年シーズンは、一軍でのチャンスを掴みます。10月11日には広島カープを相手に一軍初先発のマウンドに上がりました。そして、10月14日の中日ドラゴンズ戦では、5回途中からリリーフとして登板。その後を無失点に抑える見事なピッチングを見せ、念願のプロ初勝利をマークしました。しかし、続く10月16日の大洋ホエールズとのシーズン最終戦では再び先発するも、早々と打ち込まれて降板し、敗戦投手となってしまいます。

1968年以降、宇佐美氏は度重なる故障に苦しむことになります。一軍での登板機会は全くなくなり、活路を見出すべく外野手へのコンバートも試みましたが、怪我の影響は大きく、再び一軍の舞台に立つことはできませんでした。プロ入りからわずか5年、1970年シーズン限りで、彼はユニフォームを脱ぐことを決断しました。現役時代は、上から投げ下ろす力強い速球と、鋭く落ちるドロップを武器としていました。

プロ野球選手としてのキャリアは短く終わりましたが、宇佐美氏は失意のうちに人生を終えたわけではありません。現役引退後、彼は迷うことなく故郷である愛媛県へと戻りました。そして1971年には、地元である西条市で自らの会社を設立し、事業家として新たな一歩を踏み出します。また、野球から完全に離れることはなく、西条リトルの総監督を務めるなど、少年野球の指導を通じて地域に貢献し、後進の育成にも情熱を注ぎました。

宇佐美氏の人柄を知る上で欠かせないのが、ジャイアンツで同期入団した堀内恒夫氏との固い絆です。二人はプロ入り前から親友であり、引退後もその友情は変わることがありませんでした。堀内氏が愛媛県内で野球関連のイベントに参加する際には、宇佐美氏も必ず駆けつけ、共に食事をするなど、長年にわたる交流が続きました。堀内氏は生前の宇佐美氏を振り返り、「ハーフみたいな顔立ちで男前だった」と懐かしそうに語っていたといいます。

私生活では、高校時代からの長い交際を経て結婚した妻と、3人の娘に恵まれました。家族に囲まれ、故郷で充実した日々を送っていたようです。

晩年、癌を患った宇佐美氏は、病と闘いながらも最後まで前向きに生きました。そして2018年6月19日、69歳でその生涯を閉じました。訃報に接した親友の堀内氏は、その死を悼み、宇佐美氏との数々の思い出を綴り、固い友情の絆を改めて示しました。

プロ野球選手としては短い輝きでしたが、宇佐美敏晴氏は引退後、事業家、少年野球指導者として故郷に深く根を下ろし、親友との絆を大切にしながら、多くの人々に慕われる人生を送りました。

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