宇佐美毅 (宮内庁長官)

宇佐美毅：激動の時代を支えた宮内庁長官

宇佐美毅（うさみ たけし）は、1903年（明治36年）に生まれ、1991年（平成3年）に87歳で生涯を閉じた日本の官僚です。彼は、第2代宮内庁次長、そして第2代宮内庁長官として、激動の昭和時代から平成初期にかけての皇室を支えました。クエーカー教徒としても知られています。

生い立ちと学歴

宇佐美は、京城中学校、麻布中学校を経て、弘前高等学校に進学しました。弘前高校への進学は、父の意向によるもので、同校の第一回生です。その後、東京帝国大学文学部に進学しますが、法学部に転部しました。

官僚としてのキャリア

高等文官試験に合格後、1928年に内務省に入省。千葉県属を皮切りに、栃木県内務部社会課長、同総務部庶務課長、内務大臣秘書官、鳥取県書記官・警察部長、内務書記官・国土局総務課長、同河川課長などを歴任しました。戦後は東京都教育局長、初代東京都教育長を務め、その後、東京都住宅協会専務理事に就任しています。

宮内庁次長、そして長官へ

クリスチャンの田島道治初代宮内庁長官に請われ、1950年10月に宮内庁次長に就任。1953年2月には、接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件に関し、衆議院行政監察特別委員会に証人喚問されました。田島長官の辞任後、吉田茂首相の要請もあり、1953年12月に第2代宮内庁長官に就任しました。その在任期間は25年間に及び、歴代の宮内庁長官の中で最長です。

皇室との関わり

宇佐美は、皇太子明仁親王妃美智子の冊立において、小泉信三、鈴木菊男、黒木従達、田島道治らとともに尽力しました。また、義宮正仁親王、清宮貴子内親王の成婚、吹上御所・皇居宮殿の造営、昭和天皇と香淳皇后の訪米欧の実現など、皇室の重要な出来事に深く関わりました。

剛直な姿勢

宇佐美は、天皇の政治利用に対しては徹底的にこれを退ける剛直な姿勢を貫き、「頑固者」「堅物」と評されることもありました。1975年の昭和天皇の記者会見における原爆投下に関する発言を巡っては、その真意を補足説明するなど、宮内庁の立場を守るために奔走しました。

その死と家族

1991年1月19日、宇佐美は87歳で死去。墓所は青山霊園にあります。

父の宇佐美勝夫は、内務官僚として活躍し、貴族院議員も務めました。母は池田成彬の妹です。兄の宇佐美洵は日本銀行総裁を務めました。また、従妹は岩崎久弥の次男に、叔母は加藤武男にそれぞれ嫁いでいます。三菱ふそうトラック・バスの元会長・宇佐美隆は、毅・洵兄弟の甥にあたります。

宇佐美毅は、激動の時代の中で、日本の皇室を支え続けた重要な人物の一人です。その功績は、歴史の中に深く刻まれています。

参考文献
秦郁彦『旧制高校物語』文春新書
秦郁彦編『戦前期日本官僚制の制度・組織・人事』東京大学出版会

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