宇和島港

宇和島港について

宇和島港は、愛媛県宇和島市に位置する重要な港湾です。宇和海に面し、湾口には九島が自然の防波堤として存在するため、古くから天然の良港として知られてきました。台風時には沿岸の港だけでなく、大型船も避難のために集まるほどの、その穏やかな地形が特徴です。また、市街地の背後にそびえる鬼ヶ城山は、宇和島港への入港の目印であり、宇和島市の象徴的な存在となっています。

歴史

宇和島港の歴史は、1615年（元和元年）に初代宇和島藩主・伊達秀宗が、現在の樺崎に台場を設けたことに始まります。宇和島藩は山々に囲まれており、物資輸送や参勤交代に船舶が不可欠であったため、海上交通を重視していました。1859年（安政6年）には西洋型蒸気船を建造し、1866年（慶応2年）には英国の軍艦が入港した記録も残っています。

明治時代に入ると、1900年（明治33年）に城堀を埋め立てて内港が築造されました。航路や泊地の浚渫、浅瀬の埋め立てにより、市街地や荷役用地が整備され、1953年（昭和28年）には県の管理する港湾となり、1960年（昭和35年）には重要港湾に指定されました。

背後圏

宇和島港の背後圏である南予地域は、柑橘類や水産養殖、真珠養殖などの第一次産業が盛んです。そのため、貨物としては鮮魚や飼料・餌料などの取り扱いが多くなっています。一方で、製造業の集積は少ないため、原材料や部品の取り扱いは限定的です。

航路

現在、宇和島港からは、日振島、戸島、嘉島など近隣の島々を結ぶ定期航路が運航されており、地域住民の生活交通手段として利用されています。かつては九州・大分県を結ぶフェリー航路も存在しましたが、現在は廃止されています。また、九島とを結ぶフェリー航路も、九島大橋の開通に伴い廃止されました。かつて本港を拠点としていた宇和島運輸も、現在では八幡浜市に本社を移転しており、本港に寄港する路線はなくなっています。

航路の変遷

宇和島港周辺はリアス式海岸が続くため、半島や離島が多く、道路や鉄道の整備が遅れていました。そのため、古くから旅客船航路が地域住民にとって重要な交通手段でした。明治時代以前から宇和島と阪神や九州を結ぶ航路が存在しましたが、個人経営が中心でした。

1884年（明治17年）には大阪商船が設立されましたが、運賃や荷扱いに対する地元の不満から、地元経済人によって宇和島運輸会社が設立されました。1885年（明治18年）には「第1宇和島丸」が就航し、両社は誘客を競いました。その後、1906年（明治39年）に協定を締結し、瀬戸内海の各港に寄港しながら大阪港まで3日、1往復に8日を要しました。

明治中期には、宇和島は周辺地域の物資の集散地となり、各地から商品作物などが集まり、帰路には日用品が運ばれていました。その後、宇和島と周辺地域を結ぶ沿岸航路の開設が進み、御荘や吉田町、明浜町などの各地に航路が開かれました。

1933年（昭和8年）には盛運社（後の盛運汽船）が設立され、尾道や下灘、北灘などとの航路が開かれました。しかし、船会社の乱立や戦争による経済混乱、船舶の徴用などによって、多くの船会社が打撃を受けました。戦後の復興を経て船会社も再起しましたが、陸上交通網の発達により、沿岸航路は徐々にその役割を縮小していきました。期待された九州とのカーフェリー航路も、八幡浜港などとの競争激化により廃止され、現在では宇和島港と九州を結ぶ定期航路は存在しません。

現在の状況

宇和島港は、現在では近隣の島々への生活航路を担う一方で、背後圏の第一次産業を支える港湾としての役割を担っています。かつてのような賑わいはありませんが、その歴史と役割は今もなお重要です。


宇和島港 - 国土交通省 四国地方整備局 港湾空港部

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