宇品丸

宇品丸について

宇品丸（うじなまる）は、日本陸軍が運用した軍隊輸送船で、上陸戦の訓練や軍需物資の輸送を目的とした重要な存在でした。この船は、元々はアメリカで建造された貨物船を改装したもので、陸軍運輸部の顔として機能しました。昭和初期から太平洋戦争末期にかけて、様々な役割を果たし、戦後は民間に転用されることとなりました。

船歴

陸軍購入前

宇品丸の原型は、1919年にアメリカ・ミシガン州で建造された小型貨物船で、初めは「Cerro Gardo」という名前でアメリカ合衆国のShipping Boardが所有していました。この船は総トン数2,214トンの小型貨物船で、姉妹船には昭光丸が含まれます。1928年には日本の宗像商事に売却され、「宗安丸」と改名されました。この「宗安丸」は、陸軍が購入した際の前身と考えられています。

陸軍船時代

1928年に陸軍運輸部は、軍需輸送や上陸戦訓練に特化した船の取得を決定しました。この結果、宇品丸として改名、陸軍の所属となりました。この船は、上陸戦訓練用に改装されたことにより、重装備の吊上げや上陸用舟艇の搭載が可能となったのです。また、この船名は陸軍運輸部の所在地である宇品にちなんで名付けられました。

攻撃的任務を遂行する一方で、宇品丸は様々な演習や訓練活動にも参加し、多くの部隊の人員を輸送しました。特に1930年代には日中戦争や満州事変などの重要な歴史的出来事にも関与し、戦線後方での物資輸送に従事しました。

太平洋戦争とその後

1941年に太平洋戦争が開始されると、宇品丸は主に瀬戸内海での陸軍支援任務に従事しました。1945年、日本海での食糧輸送中に機雷に接触し、大きな損傷を受け、最終的には擱座した状態となりました。さらに、新潟での空襲により船体が被害を受け、乗員の一部が犠牲となってしまいます。

戦後の運命

戦後、宇品丸は放置されていましたが、1946年に海洋サルベージ作業が行われました。この作業により、船は浮揚され、関釜連絡船に再利用される計画が立てられましたが、最終的に朝鮮郵船に譲渡されることとなります。1950年代には日本政府から朝鮮郵船へ譲渡された後は「栄海丸」と改名され、1966年にはパナマの企業に売却されて解体されることとなりました。

慰霊碑

宇品丸の運命を受けて、新潟市では1954年に戦死者のための慰霊塔が建立され、地域愛好者による慰霊祭も行われています。宇品丸の歴史は、戦争の悲劇を語る一つの証として語り継がれています。

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