宇多野

宇多野（うたの）

宇多野は、現在の京都府京都市右京区北東部にあたる、かつての地域名です。古くは「宇太野」とも表記されました。

歴史

かつて宇多野は、山城国葛野郡に属し、南西部には御室川が、北西部には山地が広がっていました。古代においては、東海道と山陰道が交わる交通の要衝でもありました。

延暦12年（793年）1月15日、桓武天皇は平安京遷都に先立ち、藤原小黒麻呂と紀古佐美を宇多野に派遣し、地勢を調査させました（『日本紀略』）。大同元年（806年）には、宇多野は山陵の地として定められ、桓武天皇陵の候補地となりましたが、最終的には中止されました。しかし、その後、光孝天皇、村上天皇、円融天皇の陵が宇多野に築かれました。

また、宇多野は天皇の鷹狩場であったという説がありますが、これは大和国宇陀郡を「宇陀野」と称したことからの誤伝であるという見方が有力です。室町時代には、鹿苑寺（金閣寺）の所領であったとも伝えられていますが、詳しいことはわかっていません。

明治時代に入ると、明治7年（1874年）に江戸時代の福王子村、鳴滝村、山越村が合併し、宇多野村となりました。しかし、明治22年（1889年）の町村制施行時に、花園村の一部となり、「宇多野」は花園村の大字名となりました。さらに昭和6年（1931年）には、花園村が京都市に編入され、宇多野は京都市右京区の一部となりました。

その後、内閣総理大臣を務めた近衛文麿が、宇多野の地に近衛家伝来の文書を収蔵する陽明文庫を創設しました。

町名

令和元年（2019年）現在、京都市右京区内には、「宇多野」を冠した以下の10か所の町名が存在しています。

宇多野柴橋町（うたのしばはしちょう）
宇多野北ノ院町（うたのきたのいんちょう）
宇多野芝町（うたのしばちょう）
宇多野馬場町（うたのばばちょう）
宇多野御池町（うたのおいけちょう）
宇多野長尾町（うたのながおちょう）
宇多野福王子町（うたのふくおうじちょう）
宇多野法安寺町（うたのほうあんじちょう）
宇多野上ノ谷（うたのかみのたに）
宇多野御屋敷町（うたのおやしきちょう）

参考文献

佐和隆研 他『京都大事典』（淡交社、1984年） ISBN 4473008851 p.86. 「宇多野」
加納重文「宇多野」（『平安時代史事典』（角川書店、1994年） ISBN 978-4-04-031700-7）
* 「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典 26』（京都府 上巻）（角川書店、1982年） ISBN 978-4-040-01261-2

もう一度検索