日本紀略

日本紀略（にほんきりゃく）

概要

『日本紀略』は平安時代に編纂された歴史書であり、六国史の抜粋とそれ以降の歴史を記録しています。この書は神代から長元9年（1036年）までの期間を対象とし、全34巻として構成されています。また、編者は不詳であり成立時期についても確かなことはわかっていません。一般には11世紀後半から12世紀頃に成立したと考えられており、その本来の書名もはっきりとはしていません。これまで『日本史紀略』や『日本史略』、さらには『日本史類』といった異なる呼称で知られてきました。

編纂の背景

この歴史書は、平安時代における日本の歴史をまとめる試みの一環として編纂されました。その中で、特に神代に関する部分は後代に挿入されたもので、当初は存在しなかったとされています。これによって、時間的には神話の起源から平安時代前期に至るまでの歴史が一連の流れで為されることとなっています。

内容の構成

『日本紀略』の第20巻の前半部分では、光孝天皇の代までの出来事が記されており、六国史から重要な部分が抜粋されています。しかし、単なる抜粋ではなく、特に省略に際しての字句修正が行われています。そのため、元の文献から完全に一致するわけではありません。また、編者は六国史には含まれていない独自の記述を挿入しており、特に藤原種継暗殺や早良親王排除に関する記録は貴重です。この部分は『続日本紀』から政治的理由で削除されたものであり、歴史的な価値があります。

さらに、『日本後紀』の散逸部分についても『日本紀略』が情報源となるため、歴史的な研究において重要な役割を果たしています。宇多天皇から後一条天皇までの887年から1036年までの記載については、単なる抜粋ではなく、編者によって新たに構築されたものであると見なされています。ただし、この部分には日付の記録に不備があることも指摘されています。

重要性と影響

『日本紀略』の成立期を通じて、歴史的な記録の在り方は変化していきました。六国史による記録機能が貴族や官人の日記という形で分散していく中で、漢文体の編年史としての『日本紀略』や『百錬抄』のような作品が登場しました。これらは官的な勅撰史ではないため、「私撰国史」として認識されています。したがって、『日本紀略』は平安時代の歴史的意義や後世への影響を考える上で欠かせない資料となっています。

参考文献

• - 黒板勝美編『新訂増補国史大系 日本紀略』、吉川弘文館、1929年
• - 坂本太郎『六国史』日本歴史叢書27、吉川弘文館、1970年

関連項目

• - 新羅の入寇
• - 扶桑略記

このように、史書『日本紀略』は平安時代の政治的・社会的な情報を後世に伝える貴重な記録として存続しており、今日の日本の歴史研究においてその重要性は揺るぎないものといえるでしょう。

もう一度検索