宇宙望遠鏡科学研究所

宇宙望遠鏡科学研究所（Space Telescope Science Institute, STScI）は、私たちの宇宙に関する理解を深める上で極めて重要な役割を担っている研究機関です。特に、史上最も有名な宇宙望遠鏡の一つであるハッブル宇宙望遠鏡（1990年打ち上げ）と、その後継機として期待されるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡（2021年打ち上げ）の運用を主要な任務としています。

STScIは1981年にアメリカ合衆国メリーランド州ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス大学のホームウッドキャンパス内に設立されました。その運営は、アメリカ国内の主要な大学で構成される全米天文学大学連合（Association of Universities for Research in Astronomy, AURA）によって行われています。

研究所の活動内容は非常に多岐にわたります。現在進行中のハッブル宇宙望遠鏡の維持・運用に加え、次世代の眼となるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による画期的な研究に向けた準備を進めています。また、宇宙望遠鏡から得られる膨大な観測データを管理・公開するデータアーカイブであるMulti-mission Archive at Space Telescope (MAST) の運営や、太陽系外惑星探査で大きな成果を上げたケプラー宇宙望遠鏡のデータマネージメントセンターとしての機能も果たしています。これらの事業は、宇宙望遠鏡を用いた最先端の研究活動を、技術的・運用的側面から包括的に支えるためのものです。

STScIの運営資金の大部分は、アメリカ航空宇宙局（NASA）のゴダード宇宙飛行センターとの協定を通じて確保されています。しかし、これに加えて、ジェット推進研究所（JPL）や欧州宇宙機関（ESA）といった国際的な機関からの資金提供によるプロジェクトも実施しており、その活動は国際的な連携の上に成り立っています。

研究所には総勢約350名のスタッフが在籍しています。その構成は非常に多様で、天文学者や宇宙物理学者といった科学者、高度なソフトウェアを開発・保守するエンジニア、観測データの管理や望遠鏡の複雑な運用を担う専門家、そして研究成果を広く社会に伝えるための教育・広報担当者などが協力して業務にあたっています。特に、博士号（Ph.D.）を持つ科学者は約100名を数え、そのうち15名はハッブル宇宙望遠鏡プロジェクトへの貢献のため、欧州宇宙機関から派遣された研究者です。これは、STScIが国際的な協力のもとで運営されていることを象徴しています。

STScIは、NASA、世界中の天文学研究コミュニティ、そして一般市民を含む全世界の人々を代表して宇宙望遠鏡の運用を行っています。彼らの遂行する科学運用は、ハッブル宇宙望遠鏡、そして将来的にはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の提案観測者へ直接的な支援を提供するものですが、それだけに留まりません。例えば、Far Ultraviolet Spectroscopic Explorer (FUSE) や Galaxy Evolution Explorer (GALEX) といった他のNASAミッションで取得されたデータのアーカイブ管理、さらには地上に設置された望遠鏡による観測データとの連携など、より広範な天文学研究コミュニティに貢献しています。

主要な活動内容は以下の通りです。

世界中からの観測提案の科学的評価と選定
採択された観測のリソース割り当てと精密なスケジューリング
宇宙望遠鏡本体及び搭載機器の安全かつ効率的な運用
取得された生データの科学解析可能な形式への処理
処理済みデータの恒久的保管と世界中の研究者への公開
観測装置の性能維持と最適化のための補正及び運用管理

また、STScIは科学研究の成果を広く一般に普及させることにも重点を置いています。インターネット上の情報公開はもちろんのこと、学校、プラネタリウム、科学館などを通じて、宇宙の魅力を次世代や一般市民に伝えています。これらの広報活動は、宇宙科学への関心を高め、社会全体の科学リテラシー向上に貢献しています。

宇宙望遠鏡科学研究所は、宇宙の謎を解き明かすための窓口として、観測機会の提供からデータ公開、そして教育・広報活動まで、宇宙科学の発展に不可欠な役割を果たし続けているのです。

（詳細は公式ウェブサイト stsci.edu をご参照ください。）

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