宇宙科学博覧会

宇宙科学博覧会：人類の夢と希望を体感する

1978年から1979年にかけて、東京都江東区と品川区を舞台に開催された「宇宙科学博覧会」は、宇宙開発をテーマにした一大イベントでした。この博覧会は2期に分けられ、それぞれ異なるテーマと内容で展開されました。宇宙科学技術の進歩を一般の人々に広く紹介し、特に青少年への宇宙科学教育の普及に貢献することを目的としていました。

博覧会の概要

博覧会の発端は、日本科学協会がアメリカ航空宇宙局（NASA）のバイキング計画チームと接触したことにあります。NASAの協力により、バイキング計画のカメラや予備機などが日本に持ち込まれる可能性が示唆されたことを契機に、宇宙開発をテーマとした博覧会が立案されました。

第1期「宇宙科学博覧会」（SPACE EXPO'78）は、1978年7月から1979年1月まで開催されました。テーマは「宇宙-人類の夢と希望」とし、日米の宇宙科学の発展、現状、未来構想を通じて、日本の宇宙科学技術の振興・発展に寄与すること、そして青少年へ宇宙科学の平和利用を継承し、国際間の友好関係に貢献することを目指しました。入場料は大人1500円、小人400円など、当時の相場としては高めの設定でした。

第2期「国際児童年協賛宇宙科学博覧会」（SPACE EXPO'79）は、1979年3月から9月まで開催されました。この期は、国際児童年の趣旨に賛同し、児童権利宣言の精神に則り、宇宙科学技術の利益と未来を世界中の子供たちに享受させることを目指しました。小中学生の入場料が半額に値下げされるなど、子供たちへの配慮がなされました。またテーマを「宇宙-人類の夢と希望 わが子への愛を世界のどの子にも」と変更し、子供たちの未来への夢を育むことを重視しました。

シンボルとマスコット

博覧会のシンボルマークは、紺色の円形をベースに地球を示す青色の丸を中心に据え、宇宙への広がりを3つの白い楕円弧で表現しました。マスコットマークは、日本人が古来からの月面のイメージとして抱くウサギの餅つきをモチーフに、ヘルメットを被ったウサギと3つの星をあしらったデザインでした。外周には「SPACE EXPO」のロゴが連ねられていました。

展示内容

博覧会は、複数のパビリオンと施設で構成され、宇宙に関する様々な展示が行われました。

1号館（日本館）では、日本の宇宙開発の歴史、人工衛星、宇宙観測、宇宙利用、そしてロケット技術などが展示されました。特に日本の初期の人工衛星「おおすみ」を打ち上げたラムダ4Sロケットや、追跡管制室のシミュレーターが人気を集めました。第2期では、展示内容の明確化や子供向けのコーナーが追加されました。

2号館（アメリカ館）では、アメリカの宇宙開発の歴史や技術が紹介されました。有人宇宙船マーキュリー計画からアポロ計画、スカイラブ計画、バイキング計画、そしてスペースシャトル計画まで、アメリカの宇宙開発の進歩を時系列に沿って解説しました。実機や模型、VTRを多用した展示方法で、来場者にわかりやすく宇宙開発の魅力を伝えました。第2期では、展示内容が大幅にリニューアルされ、より多くの実機や模型が追加されました。

3号館（アポロ劇場）では、360度のパノラマスクリーンを用いて、アポロ計画の月面着陸の様子を再現した迫力ある映像が上映されました。実物大の月着陸船モデルが劇中に降ろされる演出もあり、観客を宇宙への旅へと誘いました。第2期では、上演時間が短縮され、より多くの人に観覧しやすいように映像とシナリオが変更されました。

4号館（宇宙博ホール）では、大スクリーンと6チャンネルステレオでIMAX映画「人は大空へ」が上映され、来場者は大空を駆け巡る体験をしました。

船の科学館でも展示が行われ、月面の謎や隕石、リモートセンシング技術などが紹介されました。また、夏季にはプール、冬季にはスケート場が設けられました。

ロケット広場では、アメリカと日本のロケット実物が展示され、迫力のある光景が広がっていました。第2期では、ラムダ4Sロケットが日本館から移設されました。

組織と運営

博覧会は、宇宙科学博覧会協会が主催し、日本船舶振興会が特別援助しました。多くの企業や団体が協賛・後援し、政府機関も参加しました。名誉会長には福田赳夫、大平正芳の両内閣総理大臣が、会長には笹川良一が就任しました。

イベントと来場者

博覧会期間中は、様々なイベントが開催され、多くの来場者を楽しませました。音楽コンサート、キャラクターショー、講演会、パレードなど、多岐にわたる催しが行われました。

第1期では500万人、第2期では600万人、合計1100万人以上が来場し、大盛況のうちに幕を閉じました。

閉幕とその後

博覧会は、大きな成功を収め、宇宙科学技術への関心を高めました。閉幕後、博覧会協会は解散しましたが、その成果は日本における宇宙開発の歴史に大きく刻まれました。

アクセス

会場へは、国鉄品川駅や大森駅、京浜急行電鉄平和島駅、営団地下鉄東西線門前仲町駅から直通バスが運行されました。また、東京港竹芝桟橋からは水上バスも利用できました。

宇宙科学博覧会は、当時の最新技術を駆使した展示と、多種多様なイベントを通じて、多くの人々に宇宙への夢と希望を与えました。この博覧会は、日本の宇宙開発史における重要な出来事の一つとして記憶されています。

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