宇文直

宇文直（うぶん ちょく）

宇文直（生年不詳 - 574年）は、北周の皇族であり、衛剌王の称号を持つ人物です。字は豆羅突、北周の основоположник 宇文泰の八男として生まれ、武帝とは同母兄弟にあたります。

生涯

宇文直は、北周の実力者であった従兄の晋公・宇文護と当初は親密な関係を築いていました。しかし、南朝陳への侵攻作戦で敗北し、官職を剥奪されたことをきっかけに、宇文護を深く憎むようになります。

その結果、宇文直は武帝に対し、宇文護を誅殺する計画を持ちかけます。武帝はこれに応じ、宇文直、宇文神挙、王軌、宇文孝伯らと密かに協議を重ねました。そして572年、宇文護暗殺計画は実行に移されます。この暗殺劇において、宇文直は『酒誥』を読み上げる宇文護を、武帝が笏で殴打して昏倒させた後、止めを刺すという重要な役割を担いました。

この功績により、宇文直は大司徒に任命され、衛国公から衛王へと昇進を果たします。しかし、浅薄で貪欲であると評されていた宇文直は、大冢宰の地位を望んでいたため、この人事に満足することはありませんでした。彼は自身の評価が不当に低いと感じていたようです。また、仲の悪かった異母兄である宇文憲を陥れるために、武帝に様々な讒言を行いましたが、武帝はこれを聞き入れることはありませんでした。

武帝は、宇文直の屋敷を東宮として召し上げる代わりに、代替となる屋敷を宇文直に選ばせました。しかし、条件に合う物件が見つからなかったため、宇文直は陟岵寺を所望しました。この際、ある人物から「卿には多くの子息がいる。あの寺では狭すぎるのではないか」と問われたのに対し、「わが身一つさえ、容れられないのだ。子孫のことなど、考えておられない」と答えたと伝えられています。

武帝と共に狩りに出かけた際、宇文直は何らかの乱暴な行為に及んだため、満座の中で武帝に鞭で打たれるという事件も起こりました。これらの出来事が重なり、宇文直の武帝に対する恨みは次第に募っていきます。

574年7月、武帝が都を留守にしている隙をついて、宇文直はついに反乱を決行します。しかし、この反乱はたちどころに鎮圧され、宇文直は捕らわれの身となりました。同年8月、宇文直は庶民に落とされ、別宮に監禁された後、処刑されました。さらに、宇文直の子である宇文賀、宇文賓（宇文洛生の子・宇文菩提の養子）、宇文賽、宇文賈、宇文響、宇文秘、宇文津、宇文乾理、宇文乾璪、宇文乾琮も皆殺しにされ、宇文直の血筋は完全に絶たれることとなりました。

宇文直の没年齢は不明ですが、異母兄の宇文憲が544年生まれであることから、宇文直の誕生はそれ以降であると推測されます。したがって、彼の享年は31歳以下であったと考えられます。

伝記資料

『周書』巻13 列伝第5
『北史』巻58 列伝第46

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