周書

周書（しゅうしょ）

『周書』は、唐の時代に令狐徳棻（れいこ とくふん）らが太宗の勅命を受けて編纂した歴史書で、二十四史の一つに数えられます。この書物は、西魏と北[[周]]という二つの王朝の歴史を記録したもので、特に北[[周]]の歴史を詳しく伝えていることから『北[[周]]書』や『後周書』とも呼ばれることがあります。全50巻で構成されており、636年（貞観10年）に完成しました。

成立の背景

唐の時代、秘書丞（ひしょのじょう）であった令狐徳棻は、高祖李淵（りえん）の時代に、まだ編纂されていなかった北斉、北[[周]]、梁、陳、隋の五つの王朝の歴史をまとめることを上奏しました。高祖はこの提案を諸臣に議論させましたが、最終的には実現しませんでした。しかし、628年（貞観2年）になって、房玄齢（ぼう げんれい）を総監とする五朝史編纂事業が始まり、『周書』はその一つとして完成を見ました。史論の部分は、岑文本（しん ぶんぼん）が担当したと言われています。

本書の編纂には、隋の牛弘（ぎゅう こう）が書いた国史（未完成）18巻などが基礎資料として用いられました。本紀は、西魏の宰相であった宇文泰（うぶん たい）から始まり、北[[周]]の五人の皇帝の事績が記されています。列伝は皇后の列伝から始まり、宗室や諸臣の列伝、そして儒林、孝義、芸術などの伝が続きます。また、外国の伝を「異域伝」と称している点が、他の正史とは異なる特徴です。さらに、巻48には、江陵に樹立された傀儡政権である後梁の記録も含まれています。

評価と問題点

『周書』の元となった牛弘らの史書は、西魏・北[[周]]の流れを汲む隋の人々によって書かれたものであり、北[[周]]にとって不都合な記述を避け、事実を歪曲している部分が多いと指摘されています。令狐徳棻は唐の臣下でありながら、牛弘らの歪曲した記述をそのまま踏襲したため、後世の歴史家からは批判されています。

『魏書』や『北斉書』と同様に、『周書』も唐または宋の時代に散逸し、一部が失われました。北宋の仁宗時代に校訂が行われましたが、その後再び散逸してしまい、後世の人が『北史』などを用いて補っています。当初、後から補われた部分には校語がつけられていましたが、それも後に不明になってしまいました。『二十二史考異』では、史臣の論が欠落している巻24、26、31-33が原本ではないとされ、特に巻31-32は『北史』の丸写しであり、巻33は少し異同があるものの、巻24・26は『北史』とも異なることが指摘されています。また、その他の部分にも誤脱や欠落が少なくないことがわかっています。

内容構成

『周書』は以下の構成で成り立っています。

帝紀
帝紀第一 - 文帝上
帝紀第二 - 文帝下
帝紀第三 - 孝閔帝
帝紀第四 - 明帝
帝紀第五 - 武帝上
帝紀第六 - 武帝下
帝紀第七 - 宣帝
帝紀第八 - 静帝
列伝
列伝第一 皇后（文帝元皇后、叱奴皇后など、計11名の皇后）
列伝第二 邵恵公顥、杞簡公連など
列伝第三 晋蕩公護、叱羅協、馮遷
列伝第四 斉煬王憲
列伝第五 文閔明武宣諸子
列伝第六 賀抜勝、賀抜允、賀抜岳など
列伝第七 寇洛、李弼、李暉など
列伝第八 趙貴、独孤信、侯莫陳崇
列伝第九 梁禦、若干恵、怡峯など
列伝第十 王羆、王慶遠、王述など
列伝第十一 達奚武、侯莫陳順、豆盧寧など
列伝第十二 王盟、王勵、王懋など
列伝第十三 尉遅迥、王謙、司馬消難
列伝第十四 周恵達、楊寛、楊鈞など
列伝第十五 蘇綽、蘇椿
列伝第十六 盧弁
列伝第十七 李賢、李遠、李基
列伝第十八 長孫倹、長孫紹遠、斛斯徴
列伝第十九 赫連達、韓果、蔡祐など
列伝第二十 史寧、陸騰、賀若敦など
列伝第二十一 王傑、王勇、宇文虬など
列伝第二十二 竇熾、竇善、于翼
列伝第二十三 韋孝寛、韋敻、梁士彦
列伝第二十四 申徽、陸通、柳敏など
列伝第二十五 厙狄峙、楊薦、趙剛など
列伝第二十六 趙善、元定、楊𢷋など
列伝第二十七 鄭孝穆、崔謙、崔猷など
列伝第二十八 鄭偉、楊纂、段永など
列伝第二十九 寇儁、韓褒、趙粛など
列伝第三十 蘇亮、蘇湛、柳虯など
列伝第三十一 韋瑱、梁昕、皇甫璠など
列伝第三十二 尉遅運、王軌、宇文神挙など
列伝第三十三 王褒、庾信
列伝第三十四 蕭撝、蕭世怡、蕭円粛など
列伝第三十五 李延孫、韋祐、韓雄など
列伝第三十六 泉企、李遷哲、楊乾運など
列伝第三十七 儒林（盧誕、盧光、沈重など）
列伝第三十八 孝義（李棠、柳檜、杜叔毗など）
列伝第三十九 芸術（冀儁、蔣昇、姚僧垣など）
列伝第四十 蕭詧
列伝第四十一 異域上（高麗、百済、蛮など）
列伝第四十二 異域下（突厥、吐谷渾、高昌など）

参考文献

『北[[周]]六典』（王仲犖撰、中華書局、1979年）
『北[[周]]地理志』（同上、同上、1980年）

『周書』は、西魏と北[[周]]の歴史を知る上で重要な資料ですが、その成立過程や内容の歪曲により、批判的な視点を持って読む必要があるとされています。

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