宇曽利湖

宇曽利湖：恐山の神秘的なカルデラ湖

青森県むつ市、下北半島ほぼ中心に位置する宇曽利湖は、霊場として知られる恐山にあるカルデラ湖です。正式名称は国土地理院による「宇曽利山湖」ですが、地元では「宇曽利湖」の名で親しまれています。その名称は、古くから宇曽利山と呼ばれていた恐山の名称に由来します。下北半島国定公園に属し、独特の自然環境と歴史的・文化的価値から、多くの観光客や研究者を惹きつけています。

形成と地理

宇曽利湖は、恐山山地の剣山の火山活動によって形成されたカルデラ湖です。外輪山は鶏頭山、地蔵山、剣山、大尽山、小尽山、北国山、屏風山、釜臥山の八峰から構成され、宇曽利湖と外輪山を総称して恐山と呼ばれています。十数本の流入河川がありますが、流出河川は正津川のみで、津軽海峡へと注いでいます。

湖底は全体的に平坦ですが、一部に急激に深くなっている箇所が存在します。また、湖の北東部は霊場恐山の境内になっており、温泉が湧き出し、火山ガスや水蒸気が噴出している場所もあります。恐山は現在も活火山として指定されており、今後の火山活動が湖の環境に影響を与える可能性があります。

強酸性の湖水

宇曽利湖の最大の特徴は、その強酸性の湖水です。水素イオン濃度(pH)は、およそ3.5付近と非常に酸性度が高くなっています。この強酸性の原因としては、湖底からの硫化水素の噴出、北東部から流れ込む強酸性の沢水、そして流出河川が1本のみであることが挙げられます。流入河川の多くは中性ですが、湖水全体は降雨量や降雪量などの気象条件によってpHが変動し、場所によってもpHに差が見られます。例えば、中性河川の河口付近ではpH4～6程度の弱酸性を示します。

特殊な生態系

このような極めて酸性の環境下にもかかわらず、宇曽利湖には独自の生態系が存在します。魚類ではウグイ(宇曽利湖ウグイ)が確認されており、世界で最も酸性の高い湖に生息する魚類として知られています。地元の研究者や高校、大学などの研究機関による長年の調査により、宇曽利湖ウグイは他のウグイにはない特殊な塩基細胞をエラに持ち、中性の流入河川に遡上して産卵し、成長とともに湖へと下る、そして正津川を下って海へは出ないといった生態が明らかになっています。

しかし、昭和40年代後半に行われたヒューム管敷設工事によって、産卵のための遡上が妨げられたこと、乱獲や卵の踏みつけなどによって、宇曽利湖ウグイの個体数は激減しました。他に、ヤゴなどの水生昆虫、プランクトン、プラナリアなども確認されています。また、中性の流入河川河口付近には水草が繁茂していますが、湖の中心部へ行くにつれて減少します。中性河川にはドジョウが生息していますが、宇曽利湖には下りてきません。

周辺では、コチドリ、ツツドリなど多様な鳥類も観察されています。また、頭無沢には水銀を吸収する性質を持つヒロハツボミゴケというコケが群落を作っています。

観光とアクセス

宇曽利湖は、日本三大霊場のひとつである恐山へのアクセス拠点にもなっています。恐山温泉も湧出しており、かつては湯坂温泉も営業していましたが、現在は廃業しています。むつ市街からは、青森県道4号むつ恐山公園大畑線を利用してアクセスできます。

まとめ

宇曽利湖は、その強酸性の湖水と、そこに適応した独自の生態系、そして霊場恐山との関連性から、自然科学的にも文化的にも貴重な存在です。今後の研究や保全活動によって、この貴重な環境が維持・発展していくことが期待されます。

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