宇田国栄

宇田国栄（うだくにえ、1903年（明治36年）3月1日 - 1988年（昭和63年）8月4日）は、日本の政治家として衆議院議員を計5期務めた人物である。鹿児島県日置郡東市来村（現在の鹿児島県日置市）に生を受け、政界では藤山派を経て福田派に所属した。

経歴

宇田国栄が政治の世界を志すきっかけとなったのは、同じ郷里の先輩であり、政界の重鎮であった床次竹二郎への強い敬慕であったとされる。床次の秘書として政治の基礎を学んだ後、岸信介の秘書へと転じ、その後の政治活動の基盤を築いた。

太平洋戦争中の1943年、宇田は当時の外務大臣、東郷茂徳からの要請を受け、大日本興亜同盟の代表使節の一員として中国大陸各地および海南島を訪問した。満州、北支、中支、南支といった地域を歴訪し、汪兆銘（汪精衛）らとの会談を通じて、アジアの発展に向けた協力関係の構築について議論を交わした。

戦後、激動の時代を迎えた日本の政界において、宇田は国政への挑戦を開始する。1946年の第22回衆議院議員総選挙に鹿児島1区から日本農本党公認で出馬し、初めて衆議院議員の議席を獲得した。

しかし、その後の道のりは平坦ではなかった。第23回から第27回までの総選挙では連続して当選を果たすことができず、長い間、国政の場から離れることとなった。この落選期間中の1948年には、政治資金に関する問題で衆議院の特別委員会に証人として喚問されるという経験もしている。こうした苦難の中でも、政治活動への意欲を失わず、1953年には戦前に岸信介が主宰した東亜国政研究会の流れを汲む形で「新政研究会」を設立し、理事長に就任した。さらに同年12月14日には、広範な保守系政治家124名の賛同を得て、保守勢力の統合を目指す「保守合同推進大会」を主導するなど、戦後の政界再編に向けた重要な動きにも関与した。

12年ぶりに衆議院議員として国政への復帰を果たしたのは、1958年の第28回総選挙において、自由民主党から立候補し当選した時である。国政復帰後は要職を歴任し、1960年の第1次池田内閣では農林政務次官に就任。さらに1962年の第2次池田第2次改造内閣では行政管理政務次官を務めるなど、政府の一員として政策遂行に携わった。

三度目の衆議院議員当選を果たしたのは、1969年の第32回総選挙である（1963年の第30回総選挙では再び落選している）。長年にわたる政治活動の功績が認められ、1973年秋には勲二等旭日重光章を受章した。

しかし、政治家人生の晩年には、再び厳しい試練が訪れる。1976年の第34回総選挙で落選した後、この選挙に関する公職選挙法違反の容疑で起訴される事態となった。1978年11月の裁判で、懲役1年6ヶ月、執行猶予5年の有罪判決が下される。この判決を受けて、政治家としての責任を痛感した宇田は、受章していた勲二等旭日重光章を返上するという決断を下した。

晩年も政治への関心を失うことはなく、1984年4月21日には当時の内閣総理大臣であった中曽根康弘と会談を行った。その席で、日米同盟を日本外交の揺るぎない基盤としながらも、冷戦下における米ソ間の緊張緩和が日本にとってより良い国際環境をもたらすとの見解を示し、「ロン・ヤス」と呼ばれた両首脳間の関係を通じて、米ソ和解への道が開けないかとの提言を行った。1987年2月には自由民主党の同志会長に就任したが、その翌年、1988年 8月4日に85歳でその生涯を閉じた。葬儀においては、同じ福田派に属し、長年にわたり深い親交のあった福田赳夫元総理大臣が葬儀委員長を務めた。

人物・エピソード

政治家としての活動に加え、興味深いエピソードも伝えられている。実業家である堤康次郎が東京の旧島津忠重邸を購入した際、当時、岸信介商工大臣の秘書官であった宇田は、柔道を愛好していた堤に対し、その邸宅を柔道の大家である三船久蔵十段の道場として提供することを提案したとされる。この提案が実現し、旧島津邸は講道館の別道場「新講堂」として活用され、柔道界の振興に貢献したという話がある。

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