宇賀神

宇賀神（うがじん、うかのかみ）

宇賀神は、日本で中世以降に信仰されるようになった神様です。財福をもたらす福神として広く知られています。

概説

宇賀神の名前の「宇賀」は、一般的に日本神話に登場する宇迦之御魂神（うかのみたま）に由来すると考えられています。ただし、仏教語の「宇迦耶（うがや）」、つまり「財施」に由来するという説も存在します。

宇賀神の姿は、人頭蛇身で、とぐろを巻いている形で表現されることが多いです。頭部の姿は一定ではなく、老人の顔であったり、女性の顔であったりと、様々な説があります。

元々は、宇迦之御魂神と同様に、穀物の神、福徳の神として民間で信仰されていたのではないかと考えられています。しかし、両者の間には名前以外の共通点は少なく、宇賀神の出自ははっきりとはわかっていません。また、蛇神や龍神の化身とされることもあります。

この蛇神の信仰は、比叡山延暦寺（天台宗）の教学に取り入れられ、仏教の神である弁才天と習合しました。この合一した神は、宇賀弁才天とも呼ばれています。竹生島宝厳寺にある弁才天像のように、宇賀神は弁才天の頭頂部に小さく乗せられていることも多く、その際には鳥居が添えられることもあります。

出自が不明であることや、経典では穀霊神としての性格が明確でないことから、宇賀神は弁才天との神仏習合の中で創り出された神であるという説もあります。

鎌倉市の宇賀福神社では、宇賀神を神道の神として祀っており、北陸地方や飛騨高山地方では、在家で宇賀神を祀る習慣が残っています。石川県金沢市の永安寺では、毎年9月23日に宇賀神の大祭が開催されています。

また、宇賀神という姓を持つ人々も日本各地に存在します（例：宇賀神友弥、宇賀神メグ）。

伝承

15世紀の『看聞日記』には、宇賀神を家に安置したことで裕福になったものの、昼寝中の妻に蛇が乗っているのを見た男が蛇を追い払ったところ、元の貧乏な生活に戻ってしまったという話が記されています。

16世紀の辞典『塵添壒嚢鈔』には、宇賀神はイザナミから生まれた保食神（ウケモチノカミ）と音通であり、五穀や樹木の成長を司る神であるため、福神となったと書かれています。また、8世紀の『丹後国風土記』に記されたトヨウケビメの羽衣伝説と同様の伝承も紹介されています。この伝承では、水浴びをしていた天女が老夫婦に衣を隠されて天に帰れなくなり、万病に効く酒を造って老夫婦に財をもたらしましたが、翁に追い出されてしまいます。その後、天女は丹後の奈具村で宇賀女神として祀られ、富をもたらす福徳神とみなされたとされ、さらに蛇に変身したと伝えられています。

18世紀初頭の天野信景による随筆集『塩尻』には、神社に祀られている宇賀神像は、老人の顔をした頭部を持つ蛇が蛙を抑えている形をしており、水を張った器に入れられていると記述されています。像に天の真名井の水などという文を唱えながら水をかける習慣もあったようです。また、熱田神宮で17世紀に修理を行った際、そのような像が出てきたとも記されています。

信景は、宇加耶が梵語で白蛇を意味することや、密教では人首蛇身ではなく蛇の像が宇賀神として扱われること、人首蛇身の像は熱田神宮だけでなく、山城国の稲荷神社にもあること、蛇首人身の像もあることなども述べています。

脚注

参考文献

藤巻一保　「異神の章」『神仏習合の本』　学習研究社、2008年、120-125頁、ISBN 978-4056051544

関連項目

ウロボロス - 円環の陰（女）と陽（男）の2匹の蛇＝年神＝穀物霊＝豊穣神
田の神と山の神
女媧と伏羲
弁才天

外部リンク

宇賀神.com
* 宇賀神を載せた弁財天座像（13世紀）

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