宇部電気鉄道デキ1形電気機関車

宇部電気鉄道デキ1形電気機関車

宇部電気鉄道デキ1形電気機関車は、かつて日本の宇部電気鉄道で使用されていた直流電気機関車です。1929年（昭和4年）にドイツのAEG社で製造され、2両（1号機と2号機）が導入されました。

構造

デキ1形は、動軸2軸を持つ凸型の電気機関車で、ドイツ製らしい堅牢な外観が特徴です。小型ながらも華奢な印象はなく、しっかりとした造りです。直流600Vを電源とし、直接制御方式を採用していました。運転室は側面に1枚の扉があるのみで、その中央に制御器が配置されています。ブレーキ装置は、空気ブレーキと手ブレーキに加え、直接制御式ながら電気ブレーキも搭載しており、当時のドイツの技術力が伺えます。

屋根はシンプルな曲線で構成され、その上には特徴的な形状のパンタグラフが搭載されています。このパンタグラフは、集電舟が大きく前後に離れており、側面から見ると六角形に見える独特な形状をしていました。全長は6,100mmと非常にコンパクトで、これは同じく買収された元両備鉄道の11号形電気機関車（後のケED10形）よりも短いです。1時間定格出力はわずか160kW（540V定格）です。

経歴

デキ1形は、宇部電気鉄道の開業に合わせて1928年（昭和3年）に製造されました。1941年（昭和16年）12月、宇部電気鉄道が宇部鉄道に合併されたことで、同社に籍を移しましたが、宇部鉄道は直流1,500Vで電化されていたため、デキ1形は直通運転を行うことはありませんでした。その後、1943年（昭和18年）4月1日に宇部鉄道が国有化され、鉄道省籍となりましたが、形式番号は変更されず、旧宇部電気鉄道の宇部西線で使用されました。国鉄に在籍した1067mm軌間の電気機関車としては、最も小型でした。

1950年（昭和25年）に宇部西線が1,500Vに昇圧された際、600V専用であったデキ1形は余剰となり、同時期に開業した岳南鉄道に譲渡されました。この際、パンタグラフは国鉄標準型のPS13に交換され、外観は一部変更されました。岳南鉄道では、1969年（昭和44年）9月の昇圧まで使用されました。その後、他社への再譲渡はされず、落雷による機器の損傷が原因で廃車になったと伝えられています。

まとめ

宇部電気鉄道デキ1形電気機関車は、そのコンパクトな車体と、ドイツ製の堅牢な構造が特徴的な電気機関車です。宇部電気鉄道から国鉄、そして岳南鉄道へとその活躍の場を移し、日本の鉄道史にその名を刻みました。

関連項目

宇部電気鉄道
宇部線
* 岳南鉄道

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