宇都宮師管区部隊

宇都宮師管区部隊（うつのみやしかんくぶたい）は、太平洋戦争の終結が近づく1945年（昭和20年）4月に編成された、大日本帝国陸軍の部隊の一つです。これは作戦遂行を主目的とする戦闘部隊ではなく、主に後方支援や地域内の業務を担う「師管区部隊」として位置づけられました。管轄地域は関東地方北部にあたる宇都宮師管区全域で、同地域に所在する様々な非作戦部隊、官衙（役所や事務所など）、そして地域防衛を担う組織をまとめて統括する役割を担っていました。部隊の兵団文字符は「丸（まる）」と定められていました。

師管区という区分は、1945年4月1日にこれまでの師管を改称して新設されたものであり、師管区部隊は、それまで師管を管轄していた留守師団を基に改編されて生まれました。宇都宮師管区においては、留守第51師団司令部が宇都宮師管区司令部に改称されています。当初は4月1日をもって移行する計画でしたが、実際の部隊としての編成完結は4月9日となりました。師管区部隊は、かつての留守師団を構成していた司令部や補充隊に加え、管区内に存在する多様な非戦闘部隊や官衙をも含む集合体であり、その構成は非常に多岐にわたっていました。

部隊の中核をなす一つが補充隊で、その定員は約8千人でした。補充隊の主な任務は、新兵の教育や訓練を行い、その後に彼らを国内外の既存部隊や新たに編成される部隊へ送り出すことでした。宇都宮師管区司令部自身も、第14師団を含む10個師団の司令部などへの人員補充を担当しました。また、各種補充隊は、歩兵団司令部、様々な戦闘部隊、野戦病院など、非常に多くの部隊への補充義務を負っていました。司令部と多数の補充隊は宇都宮周辺に配置されていましたが、歩兵第2補充隊や工兵補充隊は水戸に、歩兵第3補充隊は高崎に置かれるなど、管区内の主要都市に分散配置されていました。

宇都宮師管区内には複数の陸軍病院も存在しており、その中には師管区部隊の指揮下にあるものと、より上位組織である東部軍管区司令部に直接隷属するものがありました。例えば、当初は宇都宮陸軍病院が師管区司令官の隷下にあると規定されていましたが、後に宇都宮第一陸軍病院と宇都宮第二陸軍病院に分割され、第一は師管区部隊、第二は軍管区直属と分属することになりました。しかし、終戦時には、この両病院とも宇都宮師管区部隊の一部として位置づけられていました。

部隊の構成は、司令部、補充隊の他に、地域防衛にあたる地区特設警備隊、建設・設営等を行う特設警備工兵隊、そして徴兵・徴用等を行う連隊区司令部など、多種多様でした。これらを合わせた部隊全体の定員は、約2万9千人に及びました。これは、補充・訓練、警備、設営、医療といった、師管区部隊が担う広範な任務に対応するための編成でした。

1945年8月15日に日本がポツダム宣言を受諾し、戦争が終結すると、旧陸軍は順次解体されることになりました。多くの部隊が復員（解散）していく中で、師管区部隊は、占領軍との連絡、武装解除、そして復員業務や地域内の治安維持といった重要な後続処理を担うため、一時的に存続が図られました。各補充隊も順次復員し、例えば砲兵補充隊は9月12日に解散しています。最終的に、本土の師管区司令部は、陸軍省が廃止される直前の時期に一斉に復員を迎えました。宇都宮師管区部隊もこの時に廃止となります。

部隊そのものは解散しましたが、その機能の一部は後継組織へと引き継がれました。具体的には、宇都宮師管区司令部の実質的な業務は、第一復員省東部復員監部宇都宮支部に転換されました。ただし、この後継組織の人員規模は、師管区司令部に比べて大幅に縮小され、わずか38人体制での引き継ぎとなりました。

このように、宇都宮師管区部隊は、戦争末期の混乱期において、作戦部隊を支える後方支援、地域防衛、そして終戦後の復員業務や治安維持という、多岐にわたる役割を担った組織でした。

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