宇都宮興禅寺刃傷事件

宇都宮興禅寺刃傷事件について

宇都宮興禅寺刃傷事件は寛文8年3月2日（1668年4月13日）に発生した、宇都宮藩の歴史において重要な刃傷事件です。事件は、下野の興禅寺で行われていた宇都宮藩前藩主・奥平忠昌の法要の際に起こりました。これにより、後の浄瑠璃坂での仇討ちの発端となります。

背景と経緯

この事件が起こる背景には、宇都宮藩奥平家の重臣たちの長い対立がありました。奥平家は、長篠の戦いなどの戦功を上げた重臣から構成される「七族五老」と呼ばれる一族が存在し、その中でも特に権威を持つ12家が重なる存在でした。事件発生当時、忠昌の死から14日が経過していたため、葬儀は特に重要な行事とされていました。

事件は、奥平内蔵允と奥平隼人という2家の当主の間での些細な口論から発展しました。内蔵允が法要に遅れたことを隼人に罵倒され、激昂した内蔵允は抜刀し、隼人に斬りつけました。内蔵允は文人肌の性格であり、武人肌の隼人とのずれからこれまでの争いが続いていました。この争いは特に法要の場という神聖な状況で発生し、周囲の重臣たちは驚愕したほどです。

刃傷の展開

内蔵允は、切りつけたものの返り討ちに遭い、頭部に刀傷を負いました。その後、周囲の仲介により二人は互いの家に預けられることになりました。しかし、その夜の内蔵允は切腹し、藩には興禅寺での刀傷による破傷風の死去と報告されました。この報告は、藩にとっても重い問題を引き起こすこととなりました。

藩の裁定

切腹した内蔵允の死と相手の隼人との関係に対する藩の処分が求められる中、藩主となった奥平昌能は裁定に難航しました。仲介を行った兵藤玄蕃は喧嘩両成敗を提案しましたが、受け入れられませんでした。

事件から数ヶ月後、結局、隼人は改易され、内蔵允の嫡子や従弟である伝蔵は家禄を没収され追放されました。これに対して源八たちは、藩の裁定を不公正と捉え、恨みを募らせることになります。追放された源八たちは、4年後の浄瑠璃坂での仇討ちを決意し、再び行動を起こします。

事件の影響

宇都宮興禅寺刃傷事件は、藩の士族たちに大きな影響を与え、源八に同情する者たちが続出しました。奥平家の重臣から離れる者も現れ、同情を集めた結果、約40名の藩士が源八を支持して浪人の身となりました。

結果的に、源八の一党は仇討ちの決意を新たにし、敵を攻撃する機会を伺いました。寛文12年（1672年）には、江戸の武家屋敷に潜伏する敵を70名余りで襲撃し、隼人らを討つという成功を収めました。この事件は、藩の権力構造や士族の間の対立を浮き彫りにするものであり、一族同士の争いがもたらす悲劇を示しています。

結論

宇都宮興禅寺刃傷事件は、相互の家臣同士の小さな争いが大きな悲劇を生むことを示した事件として、宇都宮藩の歴史に刻まれています。この事件を通じて了解されるのは、個人間の対立が藩や家族全体にいかに影響を与えるかということです。このような悲劇的な展開が、藩の構造に与えた深い影響を理解するために、今なお検討され続けています。

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