宇都格

鹿児島県いちき串木野市で1984年5月20日に生を受けた宇都格（うと いたる）は、プロ野球界からダーツの世界へと華麗な転身を遂げた人物です。長身の右腕として期待されたプロ野球選手時代を経て、現在はプロダーツプレイヤーとして活躍し、さらには自身のダーツバーを経営するなど、異分野で成功を収めています。

高校時代、宇都は投手としてその才能を開花させます。2年生の秋には県大会で準優勝を果たし、チームを九州大会へと導きました。惜しくも準々決勝で敗れ、甲子園出場は叶いませんでしたが、翌3年生の夏には県大会ベスト8まで駒を進めます。特に、長身から投げ下ろす最速140km/h台後半の力強いストレートは多くの注目を集め、速球派投手として高い評価を得ました。

そのポテンシャルが認められ、2002年のNPBドラフト会議において、大阪近鉄バファローズから5位指名を受け入団します。プロ野球選手としてのキャリアがスタートしたのです。プロ入り1年目の2003年シーズンは、ウエスタン・リーグで6試合に登板し、防御率3.78というまずまずの成績を残しました。しかし、翌2004年には制球に苦しむ場面が増え、イップスのような状態に陥ったこともあり、7試合の登板で防御率15.63と大きく成績を落としてしまいます。そして、2004年11月8日に行われたプロ野球再編に伴う選手分配ドラフトにより、オリックス・バファローズへの移籍が決まります。新たなチームでの活躍が期待されましたが、オリックスでは一度も一軍の公式戦はおろか、二軍でも登板機会を得られないまま、2005年シーズン終了後に戦力外通告を受けました。プロの世界に入ってからわずか3年という短い期間で、宇都はユニフォームを脱ぐことになったのです。

プロ野球選手としては一軍出場を果たせませんでしたが、二軍公式戦では通算13試合に登板し、1勝2敗、防御率7.04という記録が残っています。特に、プロ初勝利を挙げた試合は彼にとって忘れられない記憶として刻まれているようです。1年目の2003年4月16日、藤井寺球場で行われたウエスタン・リーグの広島戦で初先発を果たし、4回まで1失点に抑える好投を見せます。そして、5月13日の中日戦（同じく藤井寺球場）では、5回二死からピンチを招いた際に投手コーチがマウンドに歩み寄り、交代を告げられるかと思いきや、「リベンジしろ」との言葉を受けて続投を決意。続く打席に立った、当時一軍でも活躍していた中日の4番打者・高橋光信選手を見事に三振に打ち取り、プロでの記念すべき初勝利を手にしたのです。「あれには燃えましたね」と、当時の興奮を振り返っています。近鉄時代の背番号は「52」でしたが、オリックス移籍後は「90」に変更されました。

プロ野球を引退後、宇都は新たな道を模索するため上京します。最初は飲食店での勤務を経て、ダーツバーの経営を手がける会社に入社し、ダーツの世界に足を踏み入れました。持ち前の集中力と手先の器用さを活かし、ソフトダーツのプレイヤーとしても才能を開花させていきます。2009年にはプロダーツトーナメント「PERFECT」に参戦し、デビュー戦でいきなり優勝を飾るという快挙を達成しました。以降、プロプレイヤーとして活躍の場を広げ、自身の名前を冠したモデルのダーツアイテムが商品化されるなど、ソフトダーツ界で確固たる地位を築いていきます。そして、2013年3月には、自身の念願であったダーツバー「飲ん兵衛GLOBE」をオープンし、経営者としても新たな一歩を踏み出しました。

野球選手としての夢は短い期間で幕を閉じましたが、宇都格は異分野であるダーツの世界でプロとして成功を収め、現在は経営者としても手腕を発揮しています。そのキャリアチェンジは、逆境を乗り越え、新たな情熱を燃やすことの重要性を示唆していると言えるでしょう。

もう一度検索