宇野哲人

宇野哲人：近代日本における中国哲学研究の巨匠

宇野哲人(1875-1974)は、近代日本における中国哲学研究のパイオニアとして知られる著名な学者です。東京大学名誉教授を務め、実践女子大学初代学長、国士舘大学教授、東方文化学院初代院長など、数々の要職を歴任しました。彼の幅広い活動と、中国哲学研究への貢献は、日本の学界に大きな足跡を残しています。

学者としての宇野哲人

熊本県熊本市に生まれた宇野は、九州学院(済々黌)を経て、東京帝国大学漢学科を卒業。卒業時には、その優秀な成績を認められ、明治天皇から恩賜の銀時計を賜りました。卒業後、東京帝国大学助教授に就任。その後、清朝末期の中国大陸に留学し、同時代の東洋史学者である桑原隲蔵と共に、中国各地を旅しました。

帰国後、ドイツに留学。西洋哲学の研究手法を取り入れ、独自の視点から中国哲学を深く探求し、その成果は多くの講義や著作に結実しました。東京帝国大学文学部支那哲学講座教授として、後進の育成にも尽力しました。

皇室との繋がり

宇野は皇室とも深い繋がりを持っていました。1933年には宮中の講書始の控えメンバーに選ばれ、1935年には昭和天皇に漢書の進講を行うという栄誉に浴しました。さらに、1960年代には、浩宮徳仁親王と礼宮文仁親王の命名の儀にも携わり、皇后美智子の依頼により、幼少の両親王に『論語』を進講するなど、皇室と密接な関係を築いていました。

辞書編纂への貢献

宇野哲人の学問的業績は、中国哲学研究にとどまりません。彼は数多くの辞書の編纂にも携わり、日本の国語学の発展にも大きく貢献しました。三省堂初期の漢和辞典編纂委員を務め、その後は長澤規矩也が引き継ぎました。代表的な編纂物として『新漢和大辞典』『新撰漢和辞典』『明解漢和辞典』などがあり、これらの辞書は長年にわたり、多くの人々に利用され、日本の学術・文化の発展に貢献しました。

多様な活動と晩年

宇野は、教育者としても活躍しました。実践女子大学初代学長に就任し、教育改革にも取り組んでいます。その他、東方文化学院初代院長、東方学会初代理事長・会長などを歴任。警察大学校講師も務めました。

晩年は、東京医科歯科大学付属病院に入院し、1974年2月19日、98歳で亡くなりました。

家族

宇野哲人の家族もまた、学術界で活躍した人物が多くいます。長男は宇野精一、三男は貫達人、四男は宇野義方、五男は経済学者で筑波大学名誉教授の宇野健吾です。長女の夫は大阪大学名誉教授の桑田六郎、次女の夫は早稲田大学教授の物理学者篠原健一、三女の夫は経済学者で東京大学名誉教授、成城大学長の安藤良雄です。

まとめ

宇野哲人は、近代日本における中国哲学研究の第一人者としてだけでなく、辞書編纂者、教育者、そして皇室に仕えた人物としても、多大な功績を残しました。彼の生涯は、学問への飽くなき探究心と、社会への貢献を体現するものでした。その業績は、現代においても高く評価され、日本の学問・文化の発展に大きな影響を与え続けています。

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