守屋善輝

守屋 善輝

守屋善輝（もりや よしてる）は、1903年5月15日に東京で生まれ、1993年3月11日にその生涯を閉じた、日本を代表する英米法学者の一人である。特に英米法を専門とし、中央大学で長年にわたり教育・研究活動に従事したほか、大学の要職を歴任して運営にも貢献した人物として知られる。その学術的な深さと教育者としての熱意は、多くの門下生や関係者に影響を与え、日本の法学界に確かな足跡を残した。

経歴と学術活動

学問の道へ進んだ守屋氏は、旧制東京帝国大学法学部にて研鑽を積み、1929年に同窓を卒業した。さらに同学部の大学院法学研究科へと進み、1933年に修了。この大学院時代に、当時の著名な法学者であった高柳賢三氏の門下に入り、その指導のもとで英米法学の基礎を深く学んだ。高柳門下で培われた素養は、守屋氏の後の研究活動の重要な基盤となった。

大学院修了後、守屋氏は研究者・教育者としての道を歩み始め、1935年には中央大学法学部教授に就任した。以来、中央大学を主な活動の場とし、多くの学生を育成した。研究を深めることにも熱心で、1936年にはイギリスのケンブリッジ大学とアメリカのハーバード大学に留学。世界の最先端の英米法学に触れる機会を得たことは、その後の守屋氏の研究に大きな示唆を与えた。

長年の研究活動は実を結び、1962年には中央大学より論文提出により法学博士の学位を授与された。この時の学位論文は「英法史の研究」であり、守屋氏が英米法の歴史的展開にも深い関心を持っていたことがうかがえる。

中央大学での貢献と要職

守屋氏は中央大学において、単に法学部教授として教育・研究を行うだけでなく、大学全体の運営においても重要な役割を担った。戦後間もない1948年には中央大学予科長を務め、大学の復興と教育体制の整備に尽力した。その後も、1951年から1972年まで長期にわたり評議員として大学の意思決定に深く関与し、1952年には学生部長、1954年には通信教育部長を歴任するなど、教育、学生支援、社会への法学普及といった多岐にわたる分野で貢献した。

さらに、1968年には中央大学の理事に就任し、同年には学長事務取扱という重責も担った。これは、守屋氏が学内において高い信頼と指導力を持っていたことの証であり、大学の重要な局面においてその手腕が求められたことを示している。

また、中央大学に設置された日本比較法研究所の活動にも深く関与し、1966年から1972年まで同研究所の所長を務めた。ここでは、比較法学の研究推進と国際交流に貢献し、所長退任後も1973年には名誉所長として研究所の発展を見守った。

主な著作と栄誉

守屋氏は、その学術的な成果や教育者としての考え方を複数の著作として公刊し、広く法学界に知らしめた。代表的な著作としては、英米契約法の体系を解説した『英國契約法概説』（有斐閣、1950年）があり、この分野の基礎文献として用いられた。また、学生に向けて書かれた啓蒙的な内容を含む『学生とエチケット』（有信堂、1955年）や、英米法における重要な格言を集めて解説した『英米法諺』（日本比較法研究所、1973年）なども著しており、その関心の幅広さと教育者としての温かい視点がうかがえる。

長年にわたる法学の研究と教育、そして中央大学における運営への多大な貢献が認められ、1974年には国家より勲三等旭日中綬章が授与された。これは、守屋氏の生涯にわたる功績に対する国家からの高い評価であった。

晩年と後世への影響

1974年、守屋氏は中央大学を定年退職し、同大学より名誉教授の称号を授与された。退職後も、日本の英米法学界の重鎮として、後進の育成や研究活動を見守った。1993年3月11日、89歳でその生涯を閉じた。

守屋善輝氏は、戦中・戦後の困難な時代を経て、英米法学という分野を日本に根付かせ、その発展に大きく貢献した人物である。中央大学における教育者、研究者、そして運営者としての多角的な活動は、今日の同大学の基礎を築く一助となった。その学識と情熱は、多くの教え子たちに受け継がれ、日本の法学界に確かな遺産を残している。

参考文献：
『恩師守屋善輝先生を偲ぶ (守屋善輝先生追悼号)』（英米法学 34号、1994年）

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