守屋武昌

守屋武昌とは

守屋武昌（もりや たけまさ）は、1944年（昭和19年）9月23日生まれの日本の元防衛官僚です。宮城県塩竈市出身で、東北大学法学部を卒業後、1971年に防衛庁に入庁しました。防衛庁では、長官官房長や防衛局長などの要職を歴任し、2003年には防衛事務次官に就任。2007年に退官するまで、日本の防衛政策に深く関与しました。しかし、退官後に在任中の収賄事件が発覚し、逮捕・起訴。懲役2年6月の実刑判決を受け、そのキャリアは大きな転換期を迎えることになりました。

生い立ちと学歴

守屋武昌は、宮城県塩竈市で生まれました。父親は、戦前は衆議院議員、戦後は塩竈市の初代市長を務めた守屋栄夫です。守屋武昌は、栄夫が59歳の時の子で、異母兄弟が4人いました。幼少期は、小高い丘の中腹にある「山の上」と呼ばれる家で過ごし、近所の人々からは「おっとりした無口のボンボン」と評されていました。中学校では生徒会長を務め、宮城県仙台第一高等学校、東北大学法学部を卒業しました。

防衛官僚としてのキャリア

大学卒業後、日本通運に入社しましたが、外交官だった叔父の勧めで官僚に転身。1971年に防衛庁に入庁しました。会計課部員や防衛課班長時代には、大蔵省との予算折衝で辣腕を振るい、「予算を必ず取ってくる男」として知られるようになりました。その後、防衛局運用課長、装備局航空機課長などの要職を歴任。1994年には防衛政策課長に就任し、政治家との接触を増やしました。

1995年の阪神・淡路大震災では、自衛隊の即時派遣を強く主張しましたが、当時の政権の政治的判断により見送られました。1996年には、内閣審議官として沖縄基地移設問題に関与。その後、防衛庁長官官房長に昇進し、防衛庁（省）の中枢を担う存在となっていきます。

防衛事務次官時代

2003年、守屋武昌は防衛事務次官に就任。「防衛庁（省）の天皇」と呼ばれるほどの権勢を誇りました。人事権を掌握し、側近を要職に抜擢する一方で、自分と対立する人物を左遷するなど、強引な手法も辞さない人物でした。事務次官として、テロ対策特別措置法やイラク特措法の制定、防衛庁の防衛省昇格など、数々の重要政策を主導しました。

普天間基地移設問題では、キャンプ・シュワブ沿岸部V字滑走路建設案を発案。2006年には、小泉純一郎首相の訪米に同行するなど、異例の活躍を見せました。同年には、弾道ミサイル防衛システムの導入に尽力したことが評価され、「デイビッド・イスラエル賞」を受賞しています。

退任と収賄事件

2007年8月、新任の小池百合子防衛大臣との対立により、防衛事務次官を退任。その後、「山田洋行事件」が発覚し、収賄容疑で逮捕されました。長年にわたり、防衛装備品の調達で便宜を図る見返りに、山田洋行から接待を受けていたことが明らかになりました。国会での証人喚問では偽証を行い、起訴されました。2010年8月、最高裁判所への上告を取り下げ、懲役2年6月の実刑判決が確定しました。退職金は6600万円でしたが、逮捕後に自主返納しています。

退職後

刑期を終えた守屋武昌は、在職時の回顧録を執筆。『「普天間」交渉秘録』、『日本防衛秘録』を出版しました。現在は、防衛問題に関する講演活動などを行っています。

山田洋行事件の詳細

守屋武昌は、山田洋行の専務だった宮﨑元伸から、防衛庁航空機課長時代から事務次官時代にかけて、長年にわたり接待を受けていました。ゴルフや旅行、さらには妻や娘名義の口座への送金など、その総額は数千万円に及ぶとされています。これらの接待の見返りとして、防衛装備品の調達において山田洋行を優遇していた疑いが持たれています。

裁判と判決

東京地検特捜部は、守屋武昌を収賄罪と偽証罪で起訴しました。裁判では、12回にわたるゴルフ旅行接待、妻と二女名義口座への賄賂送金、108回にわたる日帰りゴルフ接待、証人喚問での偽証などが罪状として挙げられました。2008年11月、東京地方裁判所は懲役2年6月の実刑判決を言い渡し、その後、控訴も棄却され、実刑が確定しました。収監後、2012年7月に仮釈放されています。

人物像

守屋武昌は、防衛官僚として卓越した能力を持つ一方で、権力志向が強く、強引な手法を厭わない人物だったと評されています。防衛政策に精通し、人脈も豊富でしたが、その強すぎる権力欲が、最終的に自らのキャリアを破滅させることになりました。また、UFOに関する質問に対し、当時の総務大臣が「想像力がない」と評するなど、ユーモラスな一面も持ち合わせていたようです。

家族と親族

守屋武昌の父親は、政治家、弁護士、歌人として知られる守屋栄夫。親族には、外交官の守屋和郎や、東京市の各区長や仙台市長を歴任した渋谷徳三郎などがいます。また、文部・内務・宮内各大臣を務めた一木喜徳郎、元京都帝国大学総長の岡田良平なども遠縁にあたります。

著書

『「普天間」交渉秘録』(新潮社, 2010年)
『日本防衛秘録』(新潮社, 2013年)

守屋武昌は、日本の防衛政策に大きな影響を与えた人物ですが、その功績と同時に、汚職事件によってその名が記憶されることとなりました。

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