山田洋行

株式会社山田洋行：軍需専門商社から汚職事件、そして解散へ

株式会社山田洋行は、1969年3月5日に設立された日本の軍需専門商社でした。社名に冠された“洋行”は、貿易商社としてのルーツを示しています。しかし、2007年に発覚した軍事利権を巡る汚職事件（山田洋行事件）により、その存在は大きく揺らぎ、最終的に2011年に解散という結末を迎えました。

概要

山田洋行は、防衛・軍需分野に特化した商社として、海外製品の販売代理店業務を主に行っていました。戦術地対地ミサイル「ATACMS」をはじめとする様々な製品を取り扱い、安全保障議員協議会の展示会などにも出展していました。

主な子会社・関連会社

米国 ヤマダインターナショナルコーポレーション
欧州ヤマダインターナショナルコーポレーション
株式会社 シーケービー（工作機械の輸出入・販売）
株式会社 日本ユ・アイ・シ（航空宇宙防衛機器・支援機器および部品の輸入販売）
株式会社ワイケイジャパン（ゴルフ場経営）

株式会社ワイケイジャパンの社名にある「ワイ・ケイ」は、山田地建グループの山田代表と東京相和銀行出身の小池の頭文字から取られています。

凋落の始まり

2007年7月、航空自衛隊のC-X次期輸送機のエンジン調達に関する契約において、GE社との契約を打ち切られたことが報道されました。これにより、約1,000億円規模の契約を失うこととなりました。さらに同年10月には、山田洋行および関連会社による政治団体や官僚への接待疑惑、そして組織的な裏金作りが大きく報道され、社会的な信用を失墜させました。

2008年6月16日、山田洋行は全社員に対し、同年8月末をもって解雇する旨を通達し、事実上の経営破綻を迎えました。そして2011年9月、正式に解散しました。

主な実績と取扱品目

山田洋行は、以下のような防衛関連製品の取り扱い実績がありました。

防衛

早期警戒機E-2C「Hawkeye 2000」能力向上改修プログラム（ノースロップ・グラマン社製）
航空機用エンジン「F110-GE-129」（F-2に搭載）
航空機用エンジン「CF6-80C2」（ボーイング747-400（日本国政府専用機）、E-767、C-Xに搭載）
船用ガスタービンエンジン「LM2500」（こんごう型護衛艦、むらさめ型護衛艦、たかなみ型護衛艦、ひゅうが型護衛艦に搭載）
輸送用エアクッション艇「LCAC」（おおすみ型輸送艦に搭載）
30/40mm艦船搭載機関砲システム「Mk46」
機上磁気探知装置「MAD」
多用途戦術地対地ミサイル「ATACMS」
ミサイル警報装置「MAWS」
射撃訓練用シミュレーター
ソフトウェア無線機
UAV, UUVプラットフォーム「M80スティレット」
iRobot社製「PackBot」

NBC対策

携帯型放射性物質分析器「GR-135」
生物剤捕集器「BioCapture 650」
生物化学兵器除染剤「EasyDECON」
専用泡発生装置「EasyCAFS」
NBC偵察車輌及びシステム
NBC対応高規格防護服システム

宇宙・衛星

国際宇宙ステーション関連機材
宇宙ステーション補給機関連機材
かぐや関連機材

その他

エアライン用航空機部品
* 民間航空機用照光スイッチパネル

山田地建グループとの関係

山田洋行は、山田地建グループというコングロマリットの一角を担っていました。山田地建グループは、多くのゴルフ場経営を手掛けていました。グループのオーナーである山田正志氏は、整理回収機構との弁済処理後に山田洋行の会長職を退任し、その後は山田地建グループの相談役を務めていました。

映画界への参入と撤退

1988年、山田洋行は映画製作会社「山田洋行ライトヴィジョン」を立ち上げ、映画界にも参入しました。北野武監督の『その男、凶暴につき』などの作品を手掛けましたが、後に撤退しています。北野武（ビートたけし）は、山田洋行事件を受けて、「山田洋行とたけしの関係」と報道されたことに対し、自身が被害者であると語っています。

山田洋行事件とその後

山田洋行は、防衛省との取引において不正な利益を得ていたとして、2007年に東京地検特捜部の捜索を受けました。この事件をきっかけに、多くの取引先が山田洋行との取引を停止し、経営状況は急速に悪化しました。そして2011年9月、山田洋行は解散しました。

山田洋行の解散は、日本の軍需産業における企業倫理のあり方について、大きな議論を呼ぶこととなりました。

もう一度検索