安仁屋政昭

安仁屋 政昭

安仁屋 政昭（あにや まさあき）氏は、1934年に沖縄県に生まれた日本の歴史学者です。専門は日本近現代史であり、特に故郷である沖縄の歴史、中でも太平洋戦争末期の沖縄戦に関する研究において顕著な功績を残しています。現在は沖縄国際大学の名誉教授を務めるほか、沖縄平和ネットワークの代表としても活動しており、歴史科学者協議会や日本科学者会議の会員でもあります。

研究活動と貢献

安仁屋氏の研究対象は、沖縄戦における一般住民が被った甚大な被害や、平和に関する学術的な考察に及びます。その中でも、特に広く知られているのは、沖縄戦における「集団自決」や住民への虐殺といった悲劇に関する詳細な研究です。氏の研究は、単に文献や資料に基づいて行われるだけでなく、戦禍を生き延びた人々からの直接的な証言を重視している点に大きな特徴があります。氏自身、数千人規模に及ぶ膨大な数の証言を収集する活動に深く関わり、戦争の現実を生の声として記録し、後世に伝えるための基盤を築きました。

また、日本の歴史教科書における沖縄戦の記述を巡る論争においても、安仁屋氏は重要な役割を果たしました。具体的には、教科書検定制度の是非が問われた家永教科書裁判の第3次訴訟において、原告側を支援する立場で証人として出廷し、専門家としての意見書を提出し証言を行っています。これは、公教育において沖縄戦の歴史がどのように扱われるべきかという問題提起に対し、歴史学者としての立場から積極的に関与したことを示しています。

学術研究の傍ら、安仁屋氏は地域史の編纂事業にも貢献しています。例えば、那覇市史や宜野湾市史といった沖縄県内の主要な自治体が発行する歴史書の編集にも携わり、地域の歴史を公的な記録として整理・保存する作業にも尽力しました。

経歴

安仁屋氏の学歴と職歴は以下の通りです。

1957年：広島大学文学部史学科を卒業。
1957年から1964年まで：沖縄県内の高等学校で教諭として勤務。
1964年：労災保険研究編集部に所属。
1967年：沖縄県史料編集所に勤務。
1972年：沖縄国際大学教育学部の教授（歴史学担当）に就任。
2006年：沖縄国際大学の名誉教授の称号を授与される。

教育者としても長年にわたり教鞭を執り、多くの学生に歴史研究の重要性や平和の尊さを伝えてきました。

主な著作

安仁屋氏の主要な著作には以下のようなものがあります。これらの著作を通じて、氏は沖縄の歴史、特に沖縄戦の真実を広く社会に伝える活動を続けています。

単著

『沖縄の無産運動』（ひるぎ社　おきなわ文庫、1983年）
『裁かれた沖縄戦』（晩声社、1989年）
『沖縄戦のはなし』（沖縄文化社、1997年）

共編著

『戦後沖縄の歴史』（儀部景俊、来間泰男共著、日本青年出版社、1971年）
『沖縄戦再体験』編著（平和文化、1983年）
『沖縄戦学習のために』編著（平和文化、1997年）
『「沖縄魂」が語る日本 「四十七番めの日本」から見た「祖国」の危機』（高嶋伸欣共著、黙出版、2000年）

編纂

沖縄県史 第10巻、各論編9 沖縄戦記録2（沖縄県教育委員会編 沖縄県教育委員会、国書刊行会、1974年）

安仁屋政昭氏は、歴史研究者、教育者、そして平和活動家として、沖縄戦の悲劇を決して風化させず、その教訓を未来に継承するための活動に多大な貢献をしています。その研究は、多くの人々の証言に裏打ちされた貴重な記録として、沖縄のみならず日本の近現代史研究において重要な位置づけられています。

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