安倍吉平

安倍吉平の生涯と業績

安倍吉平（あべ の よしひら）は、平安時代中期の貴族であり、名高い陰陽師として知られています。父は有名な陰陽師、安倍晴明であり、彼自身も陰陽道の後継者として重要な役割を果たしました。吉平は様々な公職を歴任し、その実績を通じて名声を築いていきました。

経歴の概要

吉平は正暦2年（991年）に陰陽博士に任命され、正暦4年（993年）頃からは陰陽助などの職務を遂行しました。その後、長和5年（1016年）には従四位下に、寛仁3年（1019年）の弟吉昌の死去後には、天文密奏の宣旨を受けました。また、治安元年（1021年）の春日大社行幸の際にはその功労が認められ、従四位上に昇進しました。吉平は、父の晴明と同じく、政治家の藤原道長や藤原実資からも重用され、その影響力を増していきました。

吉平は「宝物集」にも名が見え、彼が陰陽師として、具平親王の亡霊に祈祷を行ったことや、五龍祭や災厄除去の祭祀を担ったことが記録されています。これにより、彼の宗教的な役割や、陰陽道における地位が明確に示されています。

伝説とその影響

吉平に関する伝説も数多く残されており、その中には彼の超自然的な能力が強調されています。「古今著聞集」には、吉平が友人の医師と酒を酌み交わしている際、「その杯の中の酒を飲まないと地震が来る」と言った後に、実際に地震が発生したことが記されています。この出来事は、彼の予知能力の一端を示すもので、当時の人々に大きな影響を与えたことでしょう。

さらに、伝説によれば、藤原師実の邸宅が一度も火災に遭わなかったのは、吉平が手がけた呪符が貼られていたためだとされています。これらの話からも、吉平が単なる陰陽師ではなく、強力な呪術の使い手であったことが伺えます。彼はまた、占いにおいても名高く、「指すの御子」という称号で知られていました。

吉平の位置づけ

一般には、安倍晴明には二人の子供がいて、長男が吉平、次男が吉昌とされていますが、いくつかの説では吉平が実際には庶兄であるとも言われています。これは、吉平と吉昌の生年差が非常に近いことから来るもので、見解は分かれています。しかしながら、藤原実資の『小右記』や藤原道長の『御堂関白記』においては、吉平が吉昌よりも多く起用されていることから、彼が晴明の後継者であるという認識も根強く存在しています。

家族と系譜

吉平の家族については多くの情報が残されていませんが、彼には安倍晴明を父に持ち、数人の息子が存在したことが記録されています。息子の中には、安倍時親や安倍平算、安倍国時（後に円弼と名乗る）、安倍章親、安倍奉親がいます。これらの子供たちも、吉平から受け継いだ陰陽道の技術や知識を活かして、各々の道を歩んでいったことでしょう。

吉平はその業績と神秘に包まれた生涯を通じて、平安時代の陰陽師の中でも特に印象に残る存在となりました。彼の影響力や伝説は、今なお多くの人々に語り継がれています。

もう一度検索