安倍吉昌

安倍吉昌について

安倍吉昌（あべ の よしまさ）は、平安時代中期に活躍した貴族であり、陰陽師としても知られる人物です。彼は、著名な陰陽師である安倍晴明の次男（あるいは異説もある）で、播磨守を務めた背景を持っています。吉昌は天文博士、陰陽博士、主計頭、さらには陰陽頭といった重要な役職を次々と歴任しました。また、天文密奏宣旨を保持し、従四位上という高い位にも叙せられました。彼は、兄の吉平や父の晴明とともに賀茂氏の賀茂光栄らと連携し、陰陽道を統括する陰陽寮の主導的な存在としての地位を築いていきました。

経歴の詳細

吉昌は天禄元年（970年）、賀茂保憲の推薦を受けて天文道の学生である天文得業生に補され、その後、寛和2年（986年）に父・晴明の後任として天文博士に任命されます。そして、晴明の死後にあたる寛弘元年（1004年）には、陰陽頭に任ぜられました。通例、陰陽頭は賀茂氏や大中臣氏のような格式ある家系が歴任していましたが、吉昌はその職を次男という立場で引き継いだことで、安倍家と賀茂家の連携が深まり、以降は安倍家、特に室町時代以降は土御門家がこの職を独占するようになります。

吉昌には、伝説や逸話はほとんど存在しませんが、陰陽寮の筆頭である陰陽頭として名を馳せていたことから、彼の能力や実績が父や兄に劣らないものであったことは推察できます。彼が亡くなる2日前には、藤原実資による『小右記』に天文博士の職務を兼務していたことが記録されています。

吉昌の死去に伴い、後継の天文博士が見当たらなかったため、伊予に住む「（秦）久邦」という権天文博士を後任にしようとしましたが、彼の知識が不足しているとの理由から話が立ち消えとなりました。この事例は、陰陽道が隆盛を誇っていたこの時代においても人材不足が深刻であったことを示しています。また、国司や受領に付き添った陰陽師が地方に陰陽道を広めていった時期でもあり、民間の陰陽師の登場へとつながります。

吉昌の嫡男説

一般的には、安倍吉平が安倍晴明の長男として知られていますが、吉平と吉昌の生年にはほとんど差がありません。このため、世襲が慣例となっていた当時に長男が陰陽頭に任命されるべきであったことから、吉平が実は庶兄（異母兄）であり、吉昌こそが晴明の嫡男ではないかという異説があります。しかしながら、藤原実資の『小右記』や藤原道長の『御堂関白記』では、吉昌よりも吉平の名が多く見られ、安倍晴明の後継者として吉平の認識が優れていた可能性も否定できません。

さらに、吉昌の子である安倍成親も、吉昌が吉平から譲り受けた養子であるとの記述があり、これにより吉平の嫡男としての地位はさらに強い支持を得ています。

系譜

• - 父：安倍晴明
• - 母：不詳
• - 妻：不詳
• - 子女：

- 男子：安倍成親（なりちか）

史料の一部には、成親が実際には吉平の子であるとも記されており、吉昌の養子になったともされています。また、吉昌の養子として奉親を記す系図も存在しており、彼の家族関係が複雑であったことを示唆しています。吉昌の業績は、彼が活躍した平安時代の陰陽道の理解を深める上で非常に重要な要素となっています。

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