賀茂保憲

賀茂保憲（かものやすのり）

賀茂保憲は、平安時代中期に活躍した貴族であり、卓越した陰陽家として名を馳せました。父である賀茂忠行もまた陰陽道の達人であり、その影響のもと、保憲は陰陽道の世界で独自の地位を確立しました。安倍晴明の師、または兄弟子として知られています。

経歴

賀茂保憲は、父・忠行と同様に陰陽道に深く通じ、その知識と実践は当時の陰陽道の模範とされていました。暦道にも精通し、『暦林』10巻や『保憲抄』といった著作を残しましたが、これらは現在では散逸しています。

天慶4年（941年）には、暦生でありながら造暦宣旨を受け、その後、暦博士、天文博士、陰陽頭、穀倉院別当、主計頭といった要職を歴任しました。天延2年（974年）には従四位上に叙せられるなど、陰陽家としては異例の速さで昇進を重ねました。天暦6年（952年）には既に從五位下となり殿上人になっており、父である忠行の位階を上回ったことを謙遜し、大江朝綱を通じて父の昇進を願い出たという逸話も残っています。

陰陽道の分野においては、暦道を子である光栄に、天文道を安倍晴明にそれぞれ継承させ、賀茂家は陰陽道の宗家として二つの流れを形成しました。『続古事談』には、安倍晴明と賀茂光栄の間で、どちらが保憲に重んじられていたかという論争があったという逸話も伝えられています。

保憲が残した『暦林』を基に後世に書かれた『暦林問答集』は、現代においても旧暦を読む上で重要な資料とされており、彼の研究がなければ、後の暦法の発展はなかったと言えるほど、その功績は大きいものでした。

逸話

『今昔物語集』には、保憲が幼少の頃、父が祓いを依頼された際に同行した際のエピソードが記されています。祓いの最中に、供物に無数の鬼が集まっているのを見た保憲がそのことを父に伝えると、忠行は息子が修行なしに見鬼の才能を持っていることに驚き、以後、陰陽道を教えるようになったと伝えられています。

官歴

天慶4年（941年）7月17日：暦生として造暦宣旨を受ける
天慶6年（943年）4月29日：陰陽博士を兼任
天徳元年（957年）8月17日：陰陽頭
天徳4年（960年）4月22日：主計権助兼天文博士
安和2年（969年）12月：主計頭
天禄元年（970年）：正五位下
天延2年（974年）11月：従四位上（造暦功労）
貞元2年（977年）2月23日：卒去

系譜

父：賀茂忠行（?-960?）
母：不詳

子女
長男：賀茂光栄（939-1015）
次男：賀茂光国
三男：賀茂光輔
長女：賀茂保憲女

関連作品

賀茂保憲を題材とした、または彼が登場する作品は数多く存在します。

小説
帝都物語（1985年、荒俣宏）
陰陽師（1986年〜、夢枕獏）
封殺鬼（1993年、霜島ケイ）
暗夜鬼譚（1994年、瀬川貴次）
晴明。―暁の星神（1995年、加門七海）
姫神さまに願いを（1998年、藤原眞莉）
陰陽寮（1999年、富樫倫太郎）
安倍晴明-陰陽宮（2000年、谷恒生）
平安陰陽奇譚 愁恋鬼篇（2000年、如月天音）
陰陽ノ京（2001年、渡瀬草一郎）
少年陰陽師（2002年、結城光流）
晴明ふしぎ草子-妖しの子、黄昏に目覚める（2002年、足立和葉）
風の陰陽師（2007年、三田村進行）
映画
恋や恋なすな恋（1962年）
テレビドラマ
陰陽師☆安倍晴明〜王都妖奇譚〜 (2002年)
陰陽師 (2015年)
陰陽師 (2020年)
漫画
王都妖奇譚（岩崎陽子）
陰陽師・陰陽師 玉手匣(岡野玲子)
陰陽頭 賀茂保憲（2012年、伊藤勢）
陰陽師 瀧夜叉姫(睦月ムンク)
ゲーム
久遠の絆
* ONI零～復活～

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