安全標識

安全標識とは

安全標識は、私たちの身の回りの様々な場所で、危険を知らせ、安全な行動を促すために使用されています。工場などの産業施設だけでなく、公共施設、道路、建設現場など、あらゆる場所で見かけることができます。

具体的には、以下のような目的で設置されています。

危険の警告: 高電圧、落下物、有害物質などの危険を知らせます。
安全行動の指示: 保護具の着用、立ち入り禁止、避難経路の指示など、安全を確保するための行動を示します。
禁止行為の明示: 特定の行動や使用を禁止し、事故や怪我を未然に防ぎます。
消火設備や救命キットの場所の表示: 緊急時に必要な設備の場所を示します。
避難経路の案内: 緊急時に安全な場所へ誘導します。

安全標識の歴史

安全標識は、時代と共に進化を遂げてきました。以下に、主要な地域における安全標識の歴史をまとめました。

アメリカ

初期の標識とASA Z35.1: 1914年に最初の標準規格「Universal Safety Standards」が策定されました。これは、赤地に白い文字で「DANGER」と書かれたシンプルな標識でした。その後、矢印が追加され、より明確に危険の方向を示すようになりました。1941年にはASA Z35.1が策定され、1967年と1968年に改訂されました。この規格は、OSHA（労働安全衛生局）の安全標識に関する規定の基礎となりました。
ANSI Z535: 1980年代には、ANSI（米国国家規格協会）がZ53およびZ35規格を更新しました。1991年に策定されたANSI Z535では、シンボルを多用し、「警告」などのヘッダーを追加することで、より詳細な情報を提供できるようになりました。2013年には、OSHAの規定が改正され、ANSI Z535に準拠した標識の使用が認められました。

ヨーロッパ

欧州理事会指令: グローバル化以前は、各国が独自の安全標識を使用していましたが、1977年に欧州理事会指令77/576/EECが採択され、EU加盟国における安全標識の標準化が始まりました。1992年には、より詳細な情報を含む92/58/EECが策定されました。
ISO 7010: 2013年、EUはISO 7010を欧州規格として採用し、加盟国間で標識を統一しました。これにより、異なる国でも同じ意味の標識を使用できるようになりました。

オーストラリア

AS1319: オーストラリアの安全標識は、1952年の「CZ4-1952」から始まり、1972年に「AS1319-1972」として改訂されました。その後も数回の改訂を経て、現在も「AS1319-1994」が有効です。

日本

JIS規格: 日本の安全標識は、JIS（日本産業規格）によって規定されています。JIS Z9101、JIS Z9103、JIS Z9104などの規格があり、国際標準規格であるISO規格やANSI規格に沿うように改定が進められていますが、独自のデザインや色使いも残っています。例えば、非常電話や緊急停止ボタンに赤を使用するなど、ISO標準とは異なる部分もあります。2016年には、災害種別避難誘導標識システムに関するJIS Z 9098が制定され、自然災害に備えた詳細な情報を提供しています。

中国

GB規格: 中国の安全標識は、GB 2893-2008および2894-2008に基づいて規制されており、ISO 3864に類似したデザインを採用しています。

標識のデザインとレイアウト

現代の安全標識は、主に以下の要素で構成されています。

ヘッダー: 危険の種類に応じて「危険」「警告」「注意」などの言葉が表示されます。国際標準規格であるISO 7010では、これらのヘッダーの代わりに、一般的な警告シンボルが使用されることもあります。
シンボル: 言語を問わず理解できるように、危険の種類や指示内容を示す記号が使用されます。ISO 7010で定められたシンボルが世界的に広く採用されています。
注意書き: 危険の内容、危険が及ぼす影響、危険を回避する方法などを説明する文章が記述されます。文章は簡潔で分かりやすく、能動態で書かれるのが一般的です。

ポータブル・サイネージ

一時的に安全標識が必要な場合には、持ち運び可能なポータブル・サイネージが利用されます。「床が濡れています」などの標識がその代表例で、商業施設や公共施設でよく見かけます。

安全標識の有効性

安全標識の有効性を高めるためには、以下の点が重要です。

明確なメッセージ: 標識の目的と意味を誤解なく伝えられるように、シンプルで分かりやすいデザインが求められます。
適切な設置場所: 標識が見やすく、理解しやすい場所に設置する必要があります。
情報過多の回避: 情報を詰め込みすぎると、かえって標識の効果が低下する可能性があります。必要な情報に絞って、簡潔なメッセージを伝えることが重要です。
定期的なメンテナンス: 標識が破損したり、汚れて読みにくくなったりしないように、定期的なメンテナンスが必要です。

現在の標準規格

現在、世界的に広く採用されている主な安全標識の標準規格は以下の通りです。

ISO 7010: 国際標準化機構が定めた安全標識に関する規格です。
ANSI Z535: 米国国家規格協会が定めた安全標識に関する規格です。

まとめ

安全標識は、私たちの安全を守るために欠かせないものです。そのデザインや規格は、時代とともに進化を続け、より分かりやすく、効果的なものへと変化しています。安全標識を正しく理解し、適切に行動することで、事故や怪我を未然に防ぐことができます。

関連項目

国際標準化機構 (ISO)
ISO 7010 / ISO 3864
ハザードシンボル
プラカード
ピクトグラム
JIS安全色 (JIS Z 9103)
非常口
配管系の識別表示
フロアマーキングテープ
* バリケードテープ

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