安南都護府

安南都護府

安南都護府は、唐代に設置された六都護府の一つであり、現在のベトナム北部、特にハノイを中心とする紅河デルタ地域を統治するために設けられました。

歴史

成立と拡大

622年、現在のハノイに交州総管府が設置されたのが始まりです。その後、624年に交州都督府と改称され、679年に安南都護府として再編されました。8世紀頃には、人口約10万、13州、39県、32の羈縻州を支配下に置くほどに拡大しました。

周辺諸国との関係と防衛

767年には、東南アジア島嶼部の勢力からの攻撃を受け、当時の都護であった張伯儀が羅城を建設して襲撃に備えました。9世紀初頭には、チャンパ王国の攻撃が激化したため、水軍の強化と羅城の要塞化が進められました。これらの軍事費の増大は、現地住民への増税につながり、不満を募らせて都護が殺害される事態も発生しました。

南詔の侵攻と都護府の衰退

雲南地方で勢力を拡大していた南詔は、四川から雲南を経て紅河デルタに至る商業路を確保するため、安南都護府を攻撃しました（858年にトンキンを攻撃）。863年には、南詔によって安南都護府が陥落しましたが、唐はベトナム支配を諦めず、再び軍を率いて都護府を再建しました。しかし、この頃にはベトナム中南部から海南島に抜ける交易路が発展したため、紅河デルタの地勢的な優位性が失われ、都護府の重要性も低下しました。880年に起こった反乱により、都護府は形骸化し、その役割を終えました。

安南都護府の歴史は、唐の東南アジア地域における支配の変遷と、周辺諸国との関係、そして地域経済の変化を反映しています。その盛衰は、交易路の変遷や軍事的な衝突、そして現地住民の反乱など、多様な要因によって左右されました。

関連項目

阿倍仲麻呂
安北都護府
安東都護府
安西都護府
北庭都護府
単于都護府

参考文献

* 石井米雄ら編　『新版世界各国史5　東南アジア史Ⅰ』　山川出版社、1999年

もう一度検索