安宅の関

安宅の関：伝説と史跡

安宅の関は、石川県小松市安宅に位置し、かつてこの地に富樫氏が設けたと伝えられる関所です。特に、源義経と武蔵坊弁慶が奥州平泉を目指す道中、この関を通過する際に繰り広げられたとされる物語が、歌舞伎『勧進帳』として広く知られています。

勧進帳の物語

物語は、義経一行が如意の渡しを経て安宅の関に差し掛かるところから始まります。弁慶は、義経を関所突破させるため、偽の勧進帳を高らかに読み上げます。関守の富樫泰家は、その弁慶の機転と覚悟、そして義経一行の苦境を察し、彼らが義経一行であることを見抜きながらも、同情心から関所を通すという展開です。このエピソードは、人情と機知に富んだ物語として、長きにわたり人々に愛され続けています。

歴史的な背景

ただし、安宅の関が実際に存在したかどうかについては、歴史的な検証が必要です。『兵部式』には安宅駅、『義経記』には安宅の渡、『八雲御抄』には安宅橋といった記述が見られるものの、「安宅関」という名称が記されているのは謡曲『安宅』のみであり、関所としての実在性については疑問視する見方もあります。

現在の安宅の関

現在、安宅の関跡は安宅住吉神社の境内に位置しており、1939年3月18日に「安宅の関跡」として石川県の史跡に指定されています。境内には、勧進帳の場面を再現した銅像が設置されており、武蔵坊弁慶像は七代目松本幸四郎、富樫泰家像は二代目市川左團次をモデルとしています。これらの像は、物語の世界観を今に伝えるシンボルとして、多くの観光客に親しまれています。

周辺情報

安宅の関周辺には、安宅の松や如意の渡しといった関連する名所旧跡も存在します。また、源義経をテーマにしたNHK大河ドラマや、武蔵坊弁慶を主人公にしたテレビドラマなど、映像作品の舞台としても取り上げられています。さらに、お旅まつりや日本こども歌舞伎まつりin小松など、地域に根ざした祭りも開催されており、歴史と文化が息づくエリアとなっています。

安宅の関は、単なる史跡としてだけでなく、勧進帳の物語を通じて、日本人の心に深く刻まれた場所と言えるでしょう。その歴史的な背景や文化的意義を理解することで、より深く安宅の関の魅力を感じることができます。

関連情報
勧進帳の里 安宅の関
勧進帳ものがたり館
勧進帳商店会
石川県文化財 - 石川県サイト

もう一度検索