義経記

『義経記』の概要

『義経記』（ぎけいき）は、源義経と彼の周囲にいる人物たちをテーマにした軍記物語であり、作者は不詳とされています。この作品は全8巻から成り、南北朝時代から室町時代初期にかけて成立したと考えられています。『義経記』は、能楽や歌舞伎、人形浄瑠璃を含むさまざまな後世の文学作品に大きな影響を及ぼし、今日に至るまで源義経やその関連キャラクターのイメージの形成に寄与しています。

本作の名称「義経記」は、源義経の名前の音読み（ぎけい）で、訓読みと異なる点が特徴的です。文学者の森銑三は、中世・近世における人名の音読みの習慣に触れ、そうした背景を提示しています。この点で、他の歴史的記録や文学作品とも関連を持つ興味深い事例を提供しています。

概説

国文学者の岡見正雄によれば、『義経記』は『平家物語』を基にしつつ、義経の生い立ちや没落が加えられたもので、特に室町時代の特色が反映されているといいます。また、民俗学者の柳田國男は、一部の詳細な描写や義経一行が辿った不自然な経路が、多様な地域における異なる作者たちの手によるものではないかと指摘しています。このような多声的な構造が物語に風味を与え、さらに長楽寺をはじめとする鎌倉時代の寺院関係者が物語の普及に関与していた可能性も示唆されています。

あらすじ

第一巻: 義朝都落の事

義経の父、源義朝は平治の乱において、藤原信頼側に属したが、京での戦いに敗れ、先祖代々の家臣を失うこととなります。残された20数騎を引き連れ、成人した三人の子供を連れて東国へ逃れます。義朝の長男、義平は越前で北国の援助を得ようとしますが、失敗。次に近江の石山寺に籠城しますが、平家の追討により、京都の六条河原にて斬殺されます。次男の朝長も山賊に襲われ致命傷を負い、美濃の青墓宿で命を落とします。

義朝には他にも多くの子があり、熱田大宮司の娘との間に頼朝や、九條院の常盤御前との間に義経の兄弟たちがいました。義朝は激動の運命の中、各自が殺されたことに思いを馳せつつ、家族を守るために必死の思いで生き延びようとします。

第八巻: 判官御自害の事

物語の終盤、義経は十郎権頭兼房に促され、自らの命を絶つことを決意します。使用したのは「劔」と呼ばれる短刀で、彼は胸を突き刺し、絶望の中で息絶えます。敵が迫る中、北の方もまた自害の道を選び、二人の幼い命が守られないことを嘆きつつ、心中の悲劇が繰り広げられます。兼房は義経の命令で宿を焼き、義経は最後の時を迎えるのです。

関連作品

『義経記』はその文化的影響力において重要であり、能音楽劇としても知られる作品が三味線や朗読、歌などで表現されています。これは2013年から定期的に公演が行われており、様々なアプローチで義経の物語が現在に伝えられています。

終わりに

『義経記』は多くの文学作品や演目に影響を与え、その内容は戦いや家族の悲劇をテーマにした深い感情に満ちています。源義経の生涯は、歴史的な背景と共に神話的な要素を持ち、今なお多くの人々の心に残り続けています。

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