安立利綱

安立利綱（あだち としつな）

安立利綱は、天保3年（1832年）に生まれ、明治25年（1892年）9月30日に没した、幕末の薩摩藩士であり、明治期には警察官僚として活躍した人物です。福井県知事も務めました。旧姓は迫田。

生い立ちと薩摩藩士としての活動

薩摩藩士・迫田郷兵衛の次男としてこの世に生を受けました。幕末の動乱期には、薩摩藩士として活動していたと考えられます。

明治維新後の警察官僚としての活躍

明治維新後、安立利綱は新たな道に進みます。明治4年10月（1871年）には東京府取締組組頭に任命され、警察官僚としてのキャリアをスタートさせました。その後、権検官、大警部、権少警視と順調に昇進を重ね、その能力を発揮しました。

1877年2月には、陸軍歩兵少佐兼権少警視別働第三旅団第一大隊長として西南戦争に従軍しました。この戦いでの経験は、安立の人生に大きな影響を与えたと考えられます。1879年2月には警視庁少警視に昇進。同年10月、西南戦争で戦死した安立盛行・警視庁警部補（元岡山藩士）の家を継ぎ、安立と改姓しました。この改姓は、安立利綱が新たな人生を歩み始める象徴的な出来事であったと言えるでしょう。

その後も、1880年6月には兼消防本部副長に就任し、二等警視・巡査副総長、第一局長、一等警視、兼巡査総長、巡査本部長、警察本署長といった要職を歴任し、警察行政の中枢を担いました。

福井県知事としての活動

1889年2月、安立利綱は福井県知事に任命され、地方行政の長としての新たな役割を担うことになります。福井県知事としては、師範学校問題や士族授産問題といった課題に取り組み、県政の発展に尽力しました。また、県下に市制・町村制を施行するなど、地方自治の確立にも貢献しました。1891年3月、福井県知事を非職となり退任しました。

栄典

安立利綱は、その功績から以下の栄典を授与されています。

1889年（明治22年）11月29日 - 大日本帝国憲法発布記念章
1890年（明治23年）11月1日 - 従四位

親族

養子に安立綱之（警視総監、貴族院議員）がいます。綱之もまた、警察官僚として、そして政治家としても活躍しました。

まとめ

安立利綱は、幕末から明治にかけて、激動の時代を生きた人物です。薩摩藩士として幕末を過ごし、明治維新後は警察官僚として、そして福井県知事として、その手腕を発揮しました。彼の業績は、明治初期の日本における警察制度の確立と地方行政の発展に大きく貢献しました。

参考文献

高橋雄豺「安立綱之」『明治警察史研究』第4巻・後編、高橋雄豺、令文社、1972年。
歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年。

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