安藤徳器

安藤徳器について

安藤徳器（あんどう とくき、1902年8月24日 - 1953年1月15日）は、昭和初期にかけて活躍した文筆家、翻訳者、報道記者です。彼は多くの筆名を持ち、特に安藤十九木や杉森鵬程などが知られています。安藤は、維新史の研究に始まり、後には実録文学やノンフィクションの分野へと活動の幅を広げました。

生い立ちと学歴

彼は山口県岩国市に生まれ、警察官であった父のもとで育ちました。当初は軍人を目指していましたが、陸軍士官学校を経て軍人の道を諦め、京都帝国大学の史学科に進学しました。在学中には『趣味の維新史 第一巻 金子健四郎とその時代』を発表し、アカデミックな世界にも名を馳せました。

卒業後、東京高輪の公爵毛利家編輯所に入所し、ここでも意欲的な活動を展開しました。特に、1930年には大井征との共訳で『英米仏蘭聯合艦隊 幕末海戦記』を出版し、研究者としての名声を確立しました。この時期の安藤は「新進気鋭の研究者」として注目されていました。

文筆活動とジャーナリズム

安藤は1935年以降、一人前の文筆家として独立し、様々な作品を発表しました。特に、西園寺公望や野口遵に関する著作が多く、彼のノンフィクション的なアプローチは当時の文壇に新風をもたらしました。一坂太郎によれば、彼の作品群は現代におけるノンフィクション・ノベルの先駆けとして評価されています。しかし、安藤の活動は学界からは必ずしも歓迎されず、批判にも悩んでいました。

また、安藤はジャーナリストとしても活躍し、愛宕山放送局や報知新聞、読売新聞での勤務経験があります。戦時中には関東軍参謀本部で嘱託を務め、様々なメディアでの発信を行いました。1941年には、編訳した『汪精衛自叙伝』を講談社から出版し、彼の翻訳家としての力量も示しています。

人間関係と逸話

彼は多くの文人たちとの交流があり、大井征や吉川英治、福田蘭童、西園寺公一とも親交を結びました。安藤は特に独特の性格を持ち、周りから「変わった人物」として知られていました。彼は美術愛好家であり、自宅に骨董品を並べて自慢する姿があったとのことです。

また、同じく作家の坂口三郎とは同僚であり、激しい議論から殴り合いに発展することもあったといいます。安藤は友人たちからも多くのエピソードが語られ、彼の人間味を感じさせる存在でした。

晩年とその後

1942年以降、安藤の執筆活動は次第に衰えました。彼は1953年に鎌倉市で亡くなり、享年50歳という短い生涯を閉じました。その後、彼の作品は徐々に忘れ去られていったものの、彼が残した文献は今でも多くの人々に研究されています。

安藤徳器の業績は、今なお日本の文壇において一定の影響を与え続けています。彼の作品や活動を通じて、時代を超えた情報発信の重要性が感じられることでしょう。

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