宗谷丸

宗谷丸の歴史と役割

宗谷丸（そうやまる）は、日本の航海史において重要な役割を果たした貨客船です。この船は、太平洋戦争の終戦直後まで鉄道省、すなわち日本国有鉄道の前身によって稚泊連絡船として使用されていました。稚泊連絡船は、北海道の稚内と樺太の大泊を結ぶ帰路で運行されており、特に流氷が多く発生する冬季にも対応できるように設計された本格的な砕氷船でした。

宗谷丸の建造と就航

1930年、稚泊航路を運行していた壱岐丸の安全性に問題が生じ、宗谷丸の建造が決定されました。横浜船渠によって建造され、1932年に竣工。稚内に到着後、大泊との間での就航が開始されました。冬の利尻めぐりでは観光船としても利用され、1936年には遭難船から乗客161名を救助した実績も持っています。

航行の困難と適応

宗谷丸は、流氷に対する脆弱性から苦労することもありました。1937年には流氷に捕まり、推進器が破損するなどの事故も経験しましたが、その後も稚内と大泊間の運行を続けました。その間、1945年にはアメリカ潜水艦の攻撃を受けながらも無事であったという不運を乗り越えながらの航行が印象的です。

戦後の変化

1945年8月、ソ連軍の侵攻を受ける中で、宗谷丸は樺太からの引き揚げ輸送を行い、航路の消滅とともに青函航路に移りました。1952年には広島鉄道管理局に転属し、貨物船として石炭の輸送にあたりました。さらに、1954年の洞爺丸台風の際には青函連絡船で旅客輸送に再利用されました。

訓練船としての活用

1955年に臨時の「連絡船改善対策審議会」を経て、宗谷丸は訓練船としての役割も果たしました。石炭輸送に復帰後も、航海中に訓練を行うなど、多様な利用がされていました。

南極観測船の候補

戦後、南極観測が行われる際に、宗谷丸もその改造候補に挙げられましたが、最終的には「宗谷」という旧海軍の特務艦が選ばれました。宗谷丸は、その後も独自の道を歩み続けました。

記念としての存在

宗谷丸は、現在も稚内港の航路記念碑や稚内駅にその名残を留めています。模造された号鐘や、その絵は航海の記憶を伝えています。宗谷丸は、単なる移動手段以上の価値を持つ存在として、今なお多くの人々に覚えられています。

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