宗門人別改帳

宗門人別改帳：江戸時代の社会構造を映す鏡

宗門人別改帳は、江戸時代中期に作成された住民台帳です。宗門改帳と人別改帳が統合されたもので、現代の戸籍や租税台帳に相当します。この台帳は、当時の社会構造や人口動態、さらには宗教政策を知る上で極めて重要な史料となっています。

誕生の背景：宗教弾圧と領地支配

宗門人別改帳の成立には、江戸幕府の宗教政策と領地支配のあり方が深く関わっています。幕府はキリスト教の禁教令を発布し、寺請制度を確立することで、住民の宗教信仰を厳しく管理しました。この管理を目的とした定期調査が「宗門改」であり、その結果が記録された台帳が「宗門改帳」です。

一方、豊臣秀吉による兵農分離政策以降、領主たちは自らの領地の詳細な把握を必要としました。特に、年貢徴収や夫役などの負担能力を正確に知るために、「人別改」という住民調査が行われるようになりました。この調査で作成されたのが「人別改帳」です。人別改帳には、宗門改帳にはない年齢や家族構成などの詳細な情報が記載されていました。

寛文5年（1665年）、幕府は諸藩にも宗門改帳の作成を命じました。これにより、人別改帳に宗旨の情報が加わる形で「宗門人別改帳」が作成されるようになり、寛文11年（1671年）には法的に整備され、定期的な調査が義務化されました。

台帳の内容と作成方法

宗門人別改帳は、町村単位で名主や庄屋、町年寄などが作成しました。当初は毎年作成されていたようですが、後に数年ごとになった地域もあったようです。台帳には、家族単位の氏名、年齢、檀徒として属する寺院名などが記載されており、事実上の戸籍として機能していました。

住民の転出転入にも厳格な手続きが求められました。婚姻や奉公などで土地を離れる際には「寺請証文」を作成し、移転先で新たな改帳に記載される必要がありました。この手続きを怠って移動した者は「帳外れ（無宿）」となり、居住制限などの不利益を被るなど、社会的な制裁がありました。

目的の変化と全国的な調査

18世紀に入ると、宗門人別改帳の目的は宗教調査から次第に人口動態の把握や租税徴収のための基礎資料へと変化していきました。享保の改革以降は全国的な調査の取りまとめが行われ、享保11年（1726年）からは調査期間が6年ごとになりました。キリシタン弾圧の激減とともに、宗教調査としての側面は薄れ、戸籍や租税台帳としての役割が強くなっていったのです。

まとめ：歴史研究の重要な資料

宗門人別改帳は、江戸時代の社会構造や人口動態を理解する上で欠かせない重要な史料です。宗教政策、領地支配、そして人々の生活まで、多角的に当時の社会状況を反映している点が注目されます。現代の私たちにとっても、過去の社会を理解する上で貴重な情報を提供してくれる資料と言えるでしょう。

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