宛城の戦い

宛城の戦い

宛城の戦いは、後漢末期の197年に曹操と張繡の間で行われた戦いです。この戦いで張繡が曹操に対して奇襲を仕掛け、曹操軍は大敗を喫し、曹操自身も危機に陥りました。この戦いにおける両者の動きと、その後の関係について詳しく解説します。

戦いの背景

197年、勢力拡大を目論む曹操は、張繡が拠点とする宛を攻略するため、本拠地の許昌から軍を率いて進軍しました。これに対し、張繡は参謀の賈詡に助言を求めました。賈詡は、一旦曹操に降伏し、機を見て曹操を追い払うという策を提案します。張繡はこの策を採用し、軍を率いて曹操に降伏しました。

曹操は張繡の降伏を受け入れ、引き続き宛の統治を任せました。その後、曹操は宛に滞在しますが、張繡陣営の武将である胡車児の勇猛さを知り、彼に金銀財宝を送ります。これを知った張繡は、曹操が胡車児を買収して自分を暗殺するのではないかと疑念を抱きます。

さらに、曹操は宛に滞在中、張繡の叔母にあたる鄒氏を妾にします。鄒氏は張繡の族叔父である張済の未亡人であり、張繡が面倒を見ていました。この一件を知った張繡は激怒し、曹操に強い恨みを抱くようになります。曹操もまた、張繡の不満を察知し、張繡の殺害を計画しますが、張繡は事前にその計画を察知し、先手を打って曹操軍を奇襲することを決意します。

戦いの経過

張繡は賈詡の立案した計略を用いて奇襲を敢行します。まず、軍を移動させるため、曹操軍の陣営を通過させて欲しいと申し出ます。その際、輜重が重いため、兵士に鎧を付けたまま移動させて欲しいと願い出ました。曹操はこれを快諾しますが、これは張繡の罠でした。

武装した張繡軍は曹操軍の陣営に侵入し、奇襲を仕掛けます。曹操は不意を突かれ、応戦することができません。典韋は陣門で奮戦し、張繡軍の侵入を食い止めましたが、衆寡敵せず、ついに戦死します。曹操は軽装の騎馬で逃走を図りますが、追撃を受け、絶影という愛馬を失い、自身も負傷しました。この時、曹操の息子である曹昂が自分の馬を曹操に譲り、曹操を逃がしますが、自身は戦死してしまいます。また、甥の曹安民も曹操を守って戦死しました。

曹操軍は混乱の中、各地に散り散りになって逃走しました。于禁は部下を率いて敵軍を迎え撃ち、脱走兵を一人も出さずに撤退しました。曹操は舞陰まで撤退し、張繡軍を迎え撃ちます。

戦後

曹操は典韋の死を深く悼み、手厚く弔いました。また、曹昂の死を悲しみ、丁夫人と離縁することになります。

その後、張繡は劉表と同盟を結び、曹操に対抗します。曹操は自ら南征し、張繡を攻撃しますが、袁紹の動きを警戒し、撤退を余儀なくされます。199年、官渡の戦いを前に、袁紹は張繡を味方に引き入れようとしますが、賈詡の進言により、張繡は曹操に降伏を決意します。

曹操は張繡の降伏を喜び、手厚く迎え入れました。張繡の娘を自分の息子である曹均の嫁にし、張繡を揚武将軍に任命しました。また、賈詡も厚遇し、その才能を高く評価しました。

宛城の戦いの教訓

宛城の戦いは、曹操にとって大きな痛手となりましたが、この敗戦を教訓に、その後の戦略を練り直すことになります。また、張繡の降伏を受け入れたことで、人材を重視する姿勢を内外に示すことになり、勢力拡大に繋がりました。この戦いは、曹操の天下統一への道のりにおいて、重要な転換点となりました。

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