劉表

劉表(りゅうひょう)



劉表は、後漢末期の混乱期に荊州を統治した政治家であり、儒学者でもありました。(あざな)は景升(けいしょう)といい、前漢の景帝の血を引く名門の出身です。混乱を極める時代の中、彼はどのように荊州を治め、どのような人物であったのかを詳細に見ていきましょう。

生涯



若き日の学問と党錮の禁



若い頃から儒学を深く学び、その高潔な人柄から「八及」と称されるほどの声望を得ていました。しかし、党錮の禁と呼ばれる政治弾圧事件に巻き込まれ、追われる身となります。この時期、彼は張倹という人物の逃亡を助けたことがきっかけでした。その後、黄巾の乱が発生したことで党錮の禁が解かれ、劉表は政治の舞台へと戻ります。

荊州刺史として



霊帝の死後、劉表は荊州刺史に任命されます。しかし、荊州は各地の豪族が割拠し、混乱した状態でした。そこで、彼は蔡瑁(さいぼう)、蒯越(かいえつ)、蒯良(かいりょう)らと協力し、不穏分子を鎮圧。荊州北部を支配下に置きました。その後、州の拠点となる場所を襄陽に移し、安定した統治を目指します。

董卓連合と孫堅との戦い



初平元年(190年)、各地で反董卓の兵が挙がると、劉表もこの連合に参加。初平3年(192年)には、袁術の命を受けた孫堅が荊州に侵攻しますが、劉表は黄祖(こうそ)に命じてこれを撃退。孫堅を討ち取るという大きな戦果を上げ、荊州を守り抜きます。

朝廷からの信任と勢力拡大



初平4年(193年)、劉表は朝廷から使持節・鎮南将軍などの役職を与えられ、その勢力を拡大していきます。袁術と曹操が対立すると、劉表は袁術の補給路を断ち、曹操を支援しました。また、張済の軍を吸収し、その勢力をさらに増強させます。

曹操との対立と劉備の受け入れ



その後、曹操袁紹の対立が激化すると、劉表は袁紹側につき、張繡と同盟を結び曹操と戦います。しかし、建安3年(198年)の戦いで曹操に敗北。建安5年(200年)には、官渡の戦い袁紹から援軍を求められますが、荊州内の反乱鎮圧を優先し、援軍を送ることはありませんでした。一方で、劉表は汝南から身を寄せてきた劉備を受け入れ、新野に駐屯させ、曹操への備えとしました。

晩年と死



建安8年(203年)、曹操が荊州に侵攻しますが、袁譚と袁尚が争いを始めたため、曹操は撤退。この戦いの前後に、劉備は博望の戦いで曹操軍を破っています。建安13年(208年)、曹操が再び荊州に侵攻を開始する直前に、劉表は病死します。享年67歳でした。

劉表の死後、彼の庶子である劉琮(りゅうそう)が家督を継ぎますが、州を挙げて曹操に降伏。劉表の軍勢は曹操に吸収されることとなりました。長男の劉琦劉備によって荊州牧に擁立されますが、翌年に死去しました。

人物・逸話



容姿と性格



劉表は、身長が八尺余り(約184cm)もあり、威厳のある風貌であったと伝えられています。しかし、その内面は猜疑心が強く、決断力に欠ける面があったとされています。

治績と学術奨励



劉表は政治手腕に長けており、その治世下で荊州は急速に発展しました。戦乱を避けて荊州に逃れてきた多くの人々の中には、優れた人材も多く含まれており、荊州は学術の中心地ともなりました。劉表は学問を奨励し、学校を開校。経典の収集や注釈書の作成を推進し、後世に「荊州学派」「襄陽学派」と呼ばれる学者や知識人が数多く輩出されました。

娘の予言



劉表には「娘の予言」という逸話が残っています。荊州に流行した童謡が劉表の没落を予言しており、その中で、華容県の娘が「劉表の死」を予言し、実際にその通りになったというものです。また、曹操が荊州を平定した後に、李立という人物が荊州の長官に任命されることも予言しており、その的中率の高さから、人々は驚愕したと伝えられています。

宗族




某氏(正室)
蔡氏(継室、蔡瑁の姉)
子女
劉琦(長男)
劉琮(庶子)
劉脩
娘(王粲の族兄・王凱の妻)
従子・族子
劉磐
* 劉虎

配下



蔡瑁、蒯越、蒯良、黄祖、文聘などが挙げられます。

評価



陳寿は『三国志』において、「劉表は外見は堂々としていたが、内面は猜疑心が強く、決断力に欠けていた」と評しています。また、長子を廃して庶子を後継にしたことも、不幸な出来事であったとしています。劉表は、袁紹と並び、後継者選びの失敗例として引き合いに出されることが多い人物です。しかし、彼の治世下で荊州が安定し、文化が発展したことも事実であり、複雑な人物像をしています。

劉表は、群雄割拠の時代に荊州を治めた人物として、その政治手腕と人物像は様々な角度から評価されています。彼の生涯は、後漢末期の動乱期を考える上で、重要な示唆を与えてくれるでしょう。

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