宜昌 (司馬)

宜昌（ぎしょう）について

宜昌（生没年不明）は、前漢時代に活躍した軍人です。その名前は、1930年に内モンゴル自治区の破城子で発見された木簡によって明らかになりました。木簡の記録によれば、宜昌は紀元前71年に司馬という官職にあり、匈奴の侵入に対処したことが記されています。姓は不明で、宜昌が名であると考えられています。

木簡に記された匈奴の侵入

木簡には、本始3年（紀元前71年）9月庚子の日付で、匈奴の騎馬兵約90騎が甲渠止北隧に侵入し、漢の兵卒1人を捕虜とし、弩1、矢12、牛1、衣類多数を奪ったと記録されています。この侵入に対し、司馬の宜昌は騎兵182人を率いて都尉に従い追撃したとされています。ここで言う「虜」とは匈奴を指し、都尉は辺境の守備隊長、特に居延都尉を指します。甲渠は漢代に対匈奴の防衛拠点となった砦であり、止北隧は見張り台です。宜昌の官職である司馬は、中央の大将軍に直属する武官であり、軍事作戦において重要な役割を担っていました。

匈奴の侵入の背景

匈奴は、前漢時代に北方から侵入を繰り返していた遊牧民族です。彼らの侵入は、漢の辺境地域に大きな脅威を与えており、漢は匈奴に対抗するために、各地に砦や見張り台を設置し、軍隊を配置していました。宜昌が活躍した時代も、匈奴の侵入が頻繁に行われており、彼らの活動は、漢の国防政策において重要な課題でした。

宜昌の軍事行動

木簡の記述から、宜昌が率いる騎兵部隊は、匈奴の侵入に対して迅速に追撃を行ったことがわかります。しかし、この作戦の結果がどうなったのかは、木簡には記録されておらず、詳細な戦況は不明です。この木簡は、匈奴の侵入の実態を知る上で貴重な資料であり、当時の辺境の緊張感や軍事活動の一端を垣間見ることができます。

宜昌の歴史的意義

宜昌は、歴史に名を残すような大将軍ではありませんが、辺境の防衛に尽力した将校の一人として、重要な存在です。彼の活動は、当時の漢の国防政策や、匈奴との戦いの実態を知る上で貴重な資料となっています。また、この木簡の発見は、古代中国の歴史研究において重要な進展をもたらしました。

参考文献

• - 大庭脩・編著『木簡　古代からのメッセージ』、大修館書店、1998年。

関連項目

• - 宜昌 (廷尉) - 前漢の文帝時代に廷尉を務めた同名の人物。

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