司馬

司馬（しば）とは

司馬とは、古代中国における官職の一つです。その職務範囲は王朝によって異なり、多岐にわたる役割を担いました。

中央政府における司馬

西周初期には、三公を最高位とし、次いで六卿が置かれました。この六卿の中でも、司徒、司馬、司士、司空、司寇は特に五官と呼ばれました。司馬は、この五官の一つとして、軍政と軍務を司る重要な役割を担っていました。春秋戦国時代には、楚において「令尹」と「大司馬」の二職が置かれ、どちらの職にも軍権が付与されていました。ただし、軍の統制は状況に応じて変化し、制度としては厳格ではありませんでした。漢の武帝は、大司馬を設置し、さらには「大司馬将軍」という称号も与えました。後[[漢]]になると、大司馬は太尉と改称されました。隋・唐時代の三省六部制では、兵部尚書の別称として司馬が用いられました。

軍官としての司馬

東周時代から戦国時代にかけて、司馬は各軍に配置され、軍の将帥を補佐する役割を担っていました。大夫を従える地位であり、《尉繚子》には、「(兵士)百人には卒を一人、千人には司馬一人、万人には将を一人(おいて)令する。(そうすれば)少をもって衆を誅し、弱をもって強を誅す(ことができる)」と記されています。このことから、司馬は将軍の指揮下で軍事作戦を遂行する重要な役割を担っていたことがわかります。漢や魏晋南北朝時代には、将軍が幕府を開き、その府には長史、参軍、主簿などの属官の一人として司馬が置かれました。蜀漢の丞相である諸葛亮の丞相府には、司馬として魏延や費禕などが任命されました。また、将軍の配下で別部隊を率いる別部司馬も存在しました。劉備は公孫瓚の別部司馬となり、後に平原国の相に任じられると、関羽や張飛が劉備の別部司馬となりました。司馬昭は山濤を行軍司馬とし、胡三省は「行軍司馬の号はこれに始まる」と記しています。宋代では、司馬は銅印黒綬、絳(深紅色)服、武冠を身につけていました。

地方官としての司馬

唐代には、州に司馬が置かれ、刺史を補佐する役割を担いました。しかし、実際の職務はほとんどなく、主に左遷先に使われることが多かったようです。元和10年には、白居易が越権行為を咎められて江州（現在の江西省九江市）の司馬に左遷されました。彼はこの地で名作《琵琶行》を書き上げました。その末尾には、「座中泣下誰最多　江州司馬青衫濕（座中に涙を流す者誰が最も多き　江州司馬　青衫を濕す）」とあります。明・清時代には、士大夫が同知の雅称として司馬を用いました。

関連項目

司馬氏
掾 - 日本の律令制における国司の第3等官の唐名。

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