宜昌 (廷尉)

宜昌（ぎしょう、生没年不詳）は、中国の前漢時代に活躍した高官であり、特に文帝の治世において重要な役割を果たしました。彼の姓は記録に残っておらず、「宜昌」がそのまま名として知られています。宜昌は、紀元前165年から紀元前163年までの間、司法を司る最高責任者である廷尉という要職を務めました。

略歴

宜昌に関する具体的な記録は、『漢書』の「百官公卿表」にその名が見られます。この史料によると、文帝15年（紀元前165年）に宜昌が廷尉に任命されたことが記されています。この時期、前漢の政治体制は整備されつつあり、廷尉は法秩序を維持するための重要な役職でした。

また、『漢書』の「爰盎鼂錯伝」には、宜昌が他の高官たちと共に、鼂錯を「賢良」な人物として文帝に推薦したという記述があります。これは、宜昌が単なる官僚ではなく、有能な人材を見抜き、推薦するだけの見識を持っていたことを示唆しています。鼂錯はその後、重用され、前漢の政治に大きな影響を与える人物となりました。宜昌による鼂錯の推挙は、前漢の歴史において重要な出来事の一つと言えるでしょう。

宜昌が廷尉の職を退いたのは、文帝後元年（紀元前163年）のことです。この年に「信」という人物が廷尉に任命されたため、宜昌はこの時に交代したと考えられています。しかし、その後の宜昌の動向や生涯についての記録は残されておらず、詳細な人物像を知ることは難しい状況です。

宜昌の人物像

宜昌に関する記録は断片的ですが、彼が文帝の時代に廷尉という重要な役職を務めたこと、そして鼂錯という有能な人物を推挙したことから、その行政手腕や人物眼の確かさが窺えます。また、これらの記述からは、宜昌が単なる官僚ではなく、当時の政治情勢を理解し、積極的に行動していたことが伺えます。その存在は、前漢初期の政治と官僚制度を理解する上で重要な要素の一つと言えるでしょう。

まとめ

宜昌は、前漢の文帝時代に廷尉を務めた高官であり、その在任中に鼂錯を推挙したことで歴史に名を残しました。彼の生涯に関する記録は多くありませんが、前漢初期の政治体制や人材登用を考える上で、重要な人物であることは間違いありません。宜昌の事績は、『漢書』という重要な史料に記録されており、後世にその名が伝えられています。

脚注

特になし

参考文献

班固著、小竹武夫訳『漢書』第5巻（ちくま学芸文庫）、筑摩書房、1998年。
中央研究院　漢籍電子文献資料庫、『漢書』卷十九下「百官公卿表第七下」。

関連項目

* 宜昌 (司馬) - 前漢の宣帝時代の同名の人物。司馬。

もう一度検索