宝台ループ線

宝台ループ線について

宝台ループ線（たからだいループせん）は、かつて存在した鉄道路線で、樺太の豊真線の一部として1928年に開通しました。この区間は、樺太真岡郡清水村に位置する宝台駅と、真岡町の池ノ端駅を結んでおり、急勾配の西樺太山脈を越えるために設計された特異なループ線です。特に、最大勾配は22‰に達し、急峻な地形を克服するために工夫が重ねられました。

1943年には樺太庁から鉄道省樺太鉄道局に移管され、1945年にはソ連による侵攻がありました。この際、真岡から豊原に進軍するソ連軍とそれを防ごうとする日本軍の間で激しい戦闘が発生し、多くの犠牲者が出たため、ループ線の橋梁は「魔の橋」として知られるようになりました。戦後、池ノ端駅はニコライチュクに改称され、当地で亡くなったソ連の兵士の名前が駅に付けられるなど、歴史的な意義を持っています。

戦後もこの区間は沿岸部と内陸部をつなぐ重要な幹線として機能し続けました。新たに自動信号設備が導入されるなどインフラも整備されましたが、急勾配区間や狭軌の隧道、橋梁の存在が、貨物列車の運行における障害となることが懸念されました。1971年にはサハリン中部において新たな東西連絡線が建設され、ユジノサハリンスク - ホルムスク線は次第に幹線としての地位を失っていきました。

ソ連崩壊後、ロシア運輸通信省サハリン鉄道局は経営環境の改善に苦慮しましたが、1993年からは経費削減や効率化のためさまざまな改革を実施しました。ところが、1994年に老朽化したトンネルが損壊し、ノヴォデレヴェンスカヤとニコライチュク間の運行が休止されました。修復には長大な工期が必要であることが判明し、結局この区間は1996年9月4日に正式に廃止されることとなりました。

廃止後もこの沿線は非常に美しい自然景観に恵まれており、「ソ連でもっとも美しい鉄道」と称されることもありました。観光名所としての側面を持っており、ニコライチュク方面からループ線の手前まで、観光列車が運行されることがありました。特に、ループ線に残された歴史的な鉄道施設と自然を観光資源として活用する取り組みが2010年代から進められています。

さらに、ホルムスク市の当局はこの地域を「自然・技術保護区域」とし、観光と地域振興を図る取り組みを展開しています。また、2020年にはホルムスクへの広軌化計画が決定され、2021年には橋梁付近まで改規が行われました。これにより、チョールタフモースト乗降場が新設され、観光客向けの列車が夏季に運行されるなど、今でも宝台ループ線は訪れる人々にとって興味深い歴史的スポットであり続けています。

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