宝永正字丁銀

宝永正字丁銀（ほうえいせいじちょうぎん）

宝永正字丁銀は、宝永7年（1710年）に、朝鮮通信使や琉球からの使節への贈答用として特別に鋳造された丁銀の一種です。秤量銀貨であり、異国被下銀（いこくくだされぎん）とも呼ばれました。当時の幕府が、儀礼用にふさわしい高品質な銀貨を必要とした背景から生まれた特別な銀貨です。

特徴

表面には、「寳」字と大黒の図柄が打たれています。これは宝永四ツ宝丁銀の極印と同じものです。さらに、中央部には「正」の字の極印が打たれている点が特徴で、人参代往古丁銀との識別点となっています。「正」の字は、「正銀」すなわち本来の銀品位であることを示しています。この銀貨の品位は、慶長丁銀と同じ高品質なものでした。

『金銀図録』によれば、「正」字の極印が打たれた豆板銀も鋳造されたようですが、正字豆板銀は現在のところ確認されていません。

歴史

宝永正字丁銀は、徳川将軍の代替わりを祝うために来日した朝鮮通信使への贈答用として鋳造されました。当時流通していた宝永四ツ宝丁銀は品質が低かったため、儀礼用には不適切と判断され、代わりに良質な慶長丁銀の品位に合わせて特別に鋳造されました。幕府はこの丁銀を保管し、必要に応じて使用しました。琉球からの使節への贈答用としても、同様に正字丁銀が用いられました。

品位

宝永正字丁銀の規定品位は、銀80％、銅20％とされています。しかし、「正銀」とは、より良質な銀品位である灰吹銀（約98％）であるという説もあります。

鋳造量

宝永正字丁銀の鋳造量は、京と江戸の銀座を合わせて約40貫とされています。

まとめ

宝永正字丁銀は、外交儀礼のために特別に鋳造された、高品質な銀貨です。その特徴的な刻印や歴史的背景は、当時の社会情勢や文化を映し出しています。

参考文献

金銀図録

関連項目

宝永丁銀
* 人参代往古丁銀

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