秤量銀貨

秤量銀貨とは

秤量銀貨（しょうりょうぎんか/ひょうりょうぎんか）とは、その質量が一定でない銀地金を貨幣として使用するもので、取引のたびに天秤で重さを測って使用される貨幣です。

各地の秤量銀貨

日本では、江戸時代の丁銀や豆板銀（小玉銀）が有名ですが、飛鳥時代に用いられたとされる無文銀銭や、戦国時代から江戸時代初期にかけて各地で流通した領国貨幣なども秤量銀貨の一種です。特に中国では秤量銀貨が広く用いられ、地丁銀制に見られるように、馬蹄銀などの銀錠が大口取引に用いられました。その他、鞍の形をした鞍型銀、タイでは腕輪銀や虎の舌銀などが量目に応じて取引に使用されました。

これらの秤量銀貨、特に中国のものは南鐐（なんりょう）と呼ばれる純銀に近いものでした。南鐐は中国の銀山の地名に由来し、同義語としてソーマと呼ばれるものがありましたが、これは石見銀山が佐摩と呼ばれる地にあり、そこから産出される良質の灰吹銀という意味でした。

秤量銀貨の製造と取引

銀山から産出される鉱石を製錬して得られる灰吹銀は、銀貨や銀製品の原料となります。この灰吹銀に極印を打ったものが、そのまま重さによって取引に使用され、極印銀（ごくいんぎん）と呼ばれました。また、小額取引にはこれを適宜切断した切銀（きりぎん）が用いられ、領国貨幣はこのようなものが中心でした。

領国貨幣は産地によって銀品位が異なり、幕府による丁銀は品位が一定に定められましたが、吹替えによって品位が変化しました。そのため、実質を重視する商人は見かけの量目よりも含有銀量を重視し、取引はしばしば煩雑になりました。

量目表示

日本では、秤量銀貨の量目表示は戦国時代末期以降、貫および匁の単位を主に用いましたが、それ以前は43匁（約161グラム）を銀拾両（十両）とし、これを銀一枚（ぎんいちまい）と呼ぶ単位が用いられ、江戸時代でも恩賞、贈答用にはこの単位が用いられました。一方、中国では両といえば専ら秤量銀貨の単位であり、テールと呼ばれました。

丁銀と豆板銀

やがて灰吹銀を譲葉の形状に打ち伸ばした古丁銀が登場し、これが江戸時代の丁銀の原型となりました。丁銀の量目は不定ですが、銀一枚が大方の目安でした。丁銀は銀座常是および両替商が銀500匁または銀一枚毎に包封した包銀の形で取引に使用されるのが一般的であり、裸銀の状態で売買に使用されることはほとんどありませんでした。一方、豆板銀は銀秤を用いて日常の取引に用いられることもしばしばありました。

江戸時代の秤量銀貨の取引では、江戸時代の天秤の分銅の最小単位は1分（約0.373g）であったため、0.2 - 0.3g程度以内の誤差はあったようです。

計数銀貨の登場と秤量銀貨の衰退

江戸時代の銀貨といえば当初は全て秤量銀貨を指していましたが、明和年間以降、南鐐二朱判、一分銀などの金貨単位による計数銀貨が発行されるようになりました。これは秤量銀貨に対する、小判など両を単位とする貨幣の流通量の増大を意味し、銀高金安となり江戸の諸物価高を引き起こしました。文政年間以降は計数銀貨の流通高が秤量銀貨を凌駕するようになり、銀目取引は次第に銀札および手形などに中心が移り、幕末には丁銀や豆板銀がほとんど流通していない状態となっていきました。

慶応4年（1868年）の明治政府の銀目廃止令の布令により、丁銀・豆板銀は通用停止となりました。

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