宝満寺 (志布志市)

宝満寺

宝満寺（ほうまんじ）は、かつて鹿児島県志布志市志布志帖に存在した律宗の寺院です。正式には「律宗秘山密教院宝満寺」と称し、鹿児島県の指定史跡にもなっています。この寺は、古くから地域の人々に親しまれ、特に安産祈願の寺として知られていました。

歴史

宝満寺の創建は、神亀年間に聖武天皇の勅願により建てられたとされていますが、詳しい記録は残っておらず、その詳細は不明です。しかし、正和5年（1316年）に忍性の弟子である信仙英基によって再建されたことが記録されており、この頃から寺の存在が明確になります。再建の際、奈良西大寺から運慶作と伝わる如意輪観音像が本尊として迎えられました。この如意輪観音像は安産に霊験あらたかとされ、その評判は広まり、宝満寺は坊津の一乗院、慈眼寺と並び「薩摩三名刹」と称されるほどの大寺院へと発展しました。しかし、明治2年（1869年）の廃仏毀釈によって、宝満寺は惜しまれつつも廃寺となりました。

その後、明治19年（1886年）には、大慈寺の説教所が宝満寺の跡地に建てられましたが、この説教所も昭和7年（1932年）に廃止されました。しかし、宝満寺を信仰する地元の人々の熱意により、昭和11年（1936年）に宝満寺観音堂が再建され、現在に至っています。

現状

現在、宝満寺には、戦前に再建された観音堂のほか、かつて庭園だった池や仁王像、歴代住職の墓などが残っています。近年では、室町時代様式の池泉式庭園が復元され、往時の美しい姿を偲ぶことができます。また、昭和5年（1930年）の秋頃に志布志を訪れた俳人・種田山頭火が、この地で句を詠んでいます。その句を刻んだ句碑が宝満寺跡に設置されており、多くの文学ファンが訪れています。

宝満寺は、駐車場やトイレも整備されており、訪れる人々に快適な環境を提供しています。特に安産祈願の名所として知られ、戌の日には多くの参拝客で賑わいます。寺の入り口には、「わたしはしあわせ」と書かれた石像が置かれており、訪れる人々を温かく迎え入れています。

主な行事

宝満寺では、毎年4月29日に「お釈迦祭り（しがっじょか）」が開催されます。「しがっじょか」とは、本来4月8日を指す言葉で、旧暦の4月8日にあたることから、実際には5月の連休に実施されてきました。この祭りでは、昔ながらの黒振袖に角隠しの花嫁が馬に乗って行列する「花嫁行列」が再現され、多くの人々が見物に訪れます。また、伝統料理として「せんさら（茹でたサメ料理）」が振る舞われるのも特徴です。

脚注

鹿児島県指定文化財一覧#史跡

関連項目

鹿児島県指定文化財一覧

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