実材母

実材母（さねきのはは）

実材母（生没年不詳）は、鎌倉時代に生きた女性歌人です。彼女は、権中納言・西園寺公経の五男である実材を生んだことで、その名で呼ばれています。また、歌人として知られる佐分親清の娘たちの母でもあります。

生涯

出自については詳しいことは分かっていませんが、彼女の家集には、母の危篤の知らせを受けて伊予へ下向したことや、伊豆三島社（現在の三嶋大社）へ参詣した際、伊予の三島社（大山祇神社と考えられる）を懐かしむ歌が残されています。これらのことから、伊予が出身地であった可能性も指摘されています。

公卿補任には、西園寺実材の母は「舞女」であったと記されており、白拍子をしていたと考えられています。

佐分親清の妻となった後、西園寺公経の寵愛を受け、1227年に実藤を、1229年に実材を産みました。また、後深草天皇の寵妃で幸仁親王の母となった西園寺成子（大納言二位局）も彼女の娘であると言われています。公経が亡くなった後、親清と復縁し、親清との間には1男5女をもうけました。1267年には実材に、その後親時に先立たれています。1277年頃には、晩年の弁内侍と交流がありました。

夫である親清の死後、何らかの紛争を抱え、その解決のために東国へ下向しています。その中で、親清との間の長女に先立たれ、自身も病を得て出家しました。晩年は、残された娘たちと共に歌を詠み交わし、亡くなった家族の冥福を祈る日々を送ったことが家集から窺えます。しかし、1287年頃には再び上京し、歌人であった九条隆博と贈答歌を交わしています。

人物

実材母自身は、中央歌壇で目立った活躍をすることはありませんでした。しかし、政界の実力者であり文化人でもあった西園寺公経や、娘たちを通じて、多くの歌人たちと交流があったことが家集からわかります。折々に詠んだ歌を、春・夏・秋・冬・恋・雑といった部立てを持つ小規模な家集としてまとめ、出家隠棲していた弁内侍に送り、批評を求めたところ、称賛の歌を贈られ、感激したというエピソードが残っています。

その後、彼女は弁内侍に料紙を贈っています。また、長女を亡くした後には、哀傷歌を中心とした歌集を送り、歌の批評というよりも、異なる人生を生きてきた二人の女性の共感の歌として、心を通わせました。

作品

私家集『権中納言実材卿母集』
宮内庁書陵部に所蔵されている孤本であり、実材母に関するほぼ唯一の伝記資料となっています。全887首を収め、後半生の様々な出来事や日常の歌を中心に、部立てのはっきりとした小歌集や、百首歌、東国下向の旅日記、娘を悼む哀傷歌集などが含まれています。

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