実録阿部定

映画『実録 阿部定』の概要

『実録 阿部定』は、1975年に製作された日本映画で、日活ロマンポルノのジャンルに属します。この作品は、田中登が監督を務め、宮下順子が主役の阿部定を演じました。映画はカラーで、シネマスコープ方式で撮影されています。1976年のキネマ旬報のランキングでは、第10位にランクインするなど、その影響力を示しています。

あらすじ

物語は、阿部定という女性の運命を追いかけます。彼女は中野・新井の料理屋「吉田屋」で働く若い女中であり、自身の主人である石田吉蔵との禁じられた関係に没頭します。二人の情事は、芸者や他の者たちの目も気にせず続けられ、常に危険が伴う愛情表現が繰り返されます。定は、自らの腕に傷をつけて吉蔵に舐めさせたり、首を絞める危険な行為を通じて、愛と痛みの交錯を体験します。

しかし、お金に困った定は恩師の大宮先生を訪れ、春を売って生計を立てることに。彼女の周りでは二・二六事件のラジオ放送が流れ、時代背景が物語に影を落とします。無情にも、吉蔵が体調を崩し、家庭に戻る際、定は嫉妬にかられてしまいます。安らぎを求める吉蔵の眠る間に、彼女は衝動的に哀しい結末を迎える決断を下します。

定は吉蔵を殺害し、その後、その遺体に対する異常な行動に出ます。吉蔵の死体の一部を切り取り、「満左喜」を去ることになります。これを機に定は、これまでの複雑な人生を振り返りつつ、地方に逃亡することとなります。しかし、その後、この猟奇的な事件は次第に世間でも噂となり、定は自らの運命を受け入れる準備をしなければならない状況に直面します。最終的に、警察が彼女の隠れ家に押し寄せることとなります。

スタッフとキャスト

本作品の制作には、数々の才能あるスタッフが携わっています。監督の田中登のもと、プロデューサーの結城良煕、脚本のいどあきおなどが参加。また、撮影は森勝、照明は小林秀之が手がけるなど、多くの職人技が光ります。

出演陣も豪華で、阿部定役の宮下順子を始め、石田吉蔵役には江角英明がキャスティングされました。そして、定子の恩師で愛人の大宮先生役には坂本長利が扮し、芸者役には花柳幻舟、按摩役に五條博が名を連ねます。定の父親役には久松洪介が、吉蔵の妻役には橘田良江が演じ、大きな役割を果たしています。

まとめ

『実録 阿部定』は、その内容の刺激から見る者の心を捉え、時代背景、人物関係、愛の闇を鮮烈に描き出します。この映画が持つ衝撃的な物語は、ただの恋愛物語の枠を超えた、人間の欲望と葛藤を見事に表現しています。

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