坂本長利

坂本長利：舞台と映像で輝いた名優の軌跡

坂本長利（さかもと ながとし）は、1929年10月14日に島根県出雲市で生まれ、2024年3月20日に94歳で生涯を閉じた、日本の名優です。身長163cm、体重54kgと小柄ながら、舞台、映画、テレビドラマと幅広いジャンルでその存在感を示しました。

演劇活動の黎明期

1951年、坂本は山本安英、岡倉士朗らが主宰する「ぶどうの会」に入団し、演劇の世界に足を踏み入れました。1953年には、木下順二作『風浪』で初舞台を踏み、その後も木下作『三年寝太郎』、宮本研作『明治の柩』など、数々の舞台作品に出演しました。これらの経験は、彼の演劇に対する情熱と確かな演技力を育みました。

小劇場運動の先駆者として

1964年、「ぶどうの会」解散後、坂本は竹内敏晴、和泉二郎らと共に演劇集団「変身」を結成。東京・代々木の「代々木小劇場」を拠点に、小劇場運動の先駆けとして活躍しました。この時期には、宮本研作『とべ、ここがサド島だ』『ザ・パイロット』、秋浜悟史作『冬眠まんざい』など、前衛的な作品に多数出演し、演劇界に新たな風を吹き込みました。

ライフワークとなった『土佐源氏』

1967年、坂本は独演劇『土佐源氏』（宮本常一聞き書きによる）を初演。この作品は、彼のライフワークとなり、出前芝居と称して日本各地、さらにはポーランド、スウェーデン、ドイツ、オランダ、ブラジル、ペルー、イギリス、韓国など海外でも多数公演されました。1985年には紀伊国屋演劇賞特別賞、2000年には旅の文化賞を受賞。1996年1月には広島・因島公演で1000回を突破、最終的には2023年7月2日の栃木県佐野市での公演で1223回を数え、観客を魅了し続けました。

映像作品での活躍

1971年、「変身」解散後は、映画やテレビドラマにも数多く出演しました。映画では、『薔薇の葬列』(1969年)、『真昼の情事』(1972年)、『ハーメルン』(2013年)など、様々なジャンルの作品で個性的な役柄を演じました。特に、1970年代には多数の成人映画に出演し、その演技力で存在感を示しました。また、テレビドラマでは、『鬼平犯科帳』、『大岡越前』、『水戸黄門』などの時代劇から、『北の国から』、『Dr.コトー診療所』といった現代ドラマまで、幅広い役柄を演じ、お茶の間でも親しまれました。

その他の活動

坂本は、演劇活動に加え、舞台演出や後進の指導にも力を注ぎました。また、その温厚な人柄から、多くの俳優やスタッフに慕われ、日本の演劇界、映像界に多大な貢献をしました。2024年3月20日、老衰のため栃木県佐野市の病院で亡くなりましたが、彼の遺した作品は、今もなお多くの人々に愛され続けています。

主な出演作品

映画

薔薇の葬列（1969年）
真昼の情事（1972年）
女子大生SEX方程式（1973年）
花と蛇（1974年）
実録阿部定（1975年）
肉体の門（1977年）
ハーメルン（2013年）
Dr.コトー診療所（2022年）

テレビドラマ

鬼平犯科帳（1970年、1992年、1993年）
帰ってきたウルトラマン（1971年）
大岡越前（1990年、1992年、1996年、1999年）
北の国から（1987年）
水戸黄門（1996年、1999年）
Dr.コトー診療所（2003年、2004年、2006年）

舞台

土佐源氏（一人芝居）
海神別荘（1980年）


坂本長利は、その類まれな才能と情熱で、日本の演劇、映像界に大きな足跡を残しました。彼の作品は、これからも多くの人々に感動を与え続けるでしょう。

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