客いじり

客いじりとは

客いじりとは、演者が単独で行う芸とは異なり、観客に対して何らかのアプローチをすることで成立する芸能の手法、またはそのアプローチのことを指します。

概要

主にテレビ番組やライブなどの場で、演者が観客と交流することで笑いや感動を誘います。客いじりは、古くは旅役者の地方巡業やストリップ劇場の幕間など、寄席以外の場所で行われてきた常套手段でした。そのため、芸能として「邪道」と批判されることもあります。

批判的な見方

客いじりに対しては、以下のような批判的な意見があります。

客を楽しませるべき芸人が、素人の手を借りている
笑わせているのは芸人ではなく客自身である
芸人や演者自身の「芸」がない

技術としての側面

しかし、素人から面白いリアクションを引き出すには、高度な技術が必要です。単調ないじり方ではすぐに飽きられてしまうため、客いじりはバラエティ番組などで一つの芸の技法として認知され始めています。

見世物としての価値と問題点

客いじりという技術を用いた見世物的価値ができたとされる見方があります。しかし、素人に見せかけたサクラや関係者を動員して客いじりの「やらせ」を行うケースも見られます。このような行為は、客いじりの本来の技術を持たず、見世物としての価値さえ損なうと批判されることがあります。

客いじりを得意とする芸人

四代目鈴々舎馬風：開口一番の「よく来たなァ」は、従来の寄席演芸のタブーを破り、賛否両論を呼びました。
暁伸・ミスハワイ：伸が喉を傷めたことをきっかけに、浪曲漫才から客いじり主体に転向しました。
初代林家三平：客とのやり取りを前面に押し出した独特の芸風で人気を博しましたが、当時の落語協会会長からは冷遇されました。
ケーシー高峰：医事漫談の第一人者でありながら、客いじりのみで成立する特異な芸を持っています。
マギー司郎：木訥とした茨城弁と、ネタばらしマジックで客を煙に巻きます。
イジリー岡田：客いじりから命名された芸名です。
佐賀家喜昇・旭芳子：客からの罵倒に呼応したり、客に投げ銭をせがんだりして笑いを取る音曲漫才を披露しました。
* 萩本欽一：ストリップの幕間で客いじりを始め、『スター誕生!』や『欽ドン!』などの番組で一般人を巻き込むスタイルで人気を博しました。

演劇における客いじり

演劇では通常、舞台と客席の間に「第四の壁」と呼ばれる境界線が存在します。しかし、演目によってはこの境界線を打ち破り、観客にアプローチする手法が用いられます。これはメタフィクション的な手法であり、観客を舞台と一体化させることで、演劇の枠を超えるような印象を与えます。ただし、演劇の前提を破壊する可能性があるため、非常に限定的な技法と言えます。

まとめ

客いじりは、観客との距離が近い場所で生まれる芸能の形であり、批判的な意見もありますが、高度な技術を要する芸でもあります。客いじりを得意とする芸人たちの存在が、その多様性と可能性を示しています。

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