宣政院

宣政院の設立とその役割

宣政院（せんせいいん）は、大元ウルスが設立した特異な官庁であり、その機能は二つの重要な職掌に分かれています。一つは「宗教界の統率」であり、もう一つは「チベットの統治」です。これらの役割は他の官庁とは異なり、中国史上においても非常に珍しいものでした。宣政院は中書省、枢密院、御史台と並ぶ中央三大官庁と同等の地位を持ち、その威厳は秩従一品に位置づけられていましたが、一方でチベット仏教僧や権力者の乱用を許したとして、漢文の文献ではしばしば批判される存在でもありました。

初期の歴史

宣政院の起源は、1239年に遡ります。この年、コデンの指揮するモンゴル軍が初めてチベット高原に進出し、名義上チベットはモンゴル帝国の支配下に入ることになりました。しかし、その支配は必ずしも確固たるものではなく、1260年のクビライの即位において内戦が勃発しました。この混乱の中で、クビライはチベット仏教の僧侶パクパを「国師」に任じ、彼にチベットを制圧し、宗教界を統率させることを期待しました。

パクパの任務は国師として宣政院が設立されることで引き継がれ、その後、彼は皇位の正当性を示す施策を次々と実行に移し、「帝師」としての称号を受け取ります。彼の政策実施には、多言語を操る側近たちの協力もあり、彼らが宣政院の原型であると考えられています。こうして、1291年には「総制院」が「宣政院」に改名され、昇格しました。この改名は、チベットに対するより強い植民地的な感覚を持つ行政機関へと変えるものであったと解釈されています。

力を持つ官庁としての宣政院

サンガは、宣政院の昇格に大きく貢献した無能な財務官僚としてクビライの信任を受け、国政の中心でその地位を築いていきました。しかし、1291年に失脚して以降も、宣政院の長を務めることは権力者にとっての新たな伝統となりました。様々な権力者たち、特にテムデル、エル・テムル、バヤン、トクト、ハマなどはこの役職を歴任し、宣政院は政治的混乱の一因ともなったのです。

歴史学者の藤島は、宣政院がモンゴル族の宗教的ニーズに応じるために準行政的な機能を持ち、曖昧な存在故に政治的混乱を引き起こしたと述べています。このように、宣政院は単なる宗教機関にとどまらず、チベットを含む広範な地域における管理機関としての重要性を持っていました。

組織体制

宣政院は様々な部門から成り立っており、「吐蕃等処宣慰使司都元帥府」や「烏思蔵納里速古児孫等三路宣慰使司都元帥府」などがその一端を担っています。これらの機関は、チベットの統治や宗教界の統制に寄与しており、宣政院が持つ複雑な構造を象徴しています。

結論

宣政院はその特異な役割と歴史から、元ウルスにおいて重要な地位を占めた行政機関でしたが、その活動の実態は今なお多くの謎に包まれています。チベット問題に関連する研究は続いており、過去の評価や意味が再考されることも期待されています。

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